今回は医療の質に関して報告された論文をご紹介しようと思います。
医療の質の指標は様々あるようですが、今回は小児の入院や外来患者を対象にした医療の質の指標があります。
今回は、胃腸炎の入院率を医療の質として捉えた論文を見つけたので、ご紹介しようと思います。
- イタリアの小児を対象に行われた研究
- 小児の胃腸炎による入院率を指標に、医療の質を計測した論文
イタリアからの報告です。
小児の胃腸炎診療の医療の質はどう計測する?[イタリア編]
研究の背景/目的
小児の健康への投資を強化し、小児分野におけるサービスの質をモニタリングすることの重要性に対する認識が高まっている。
米国医療研究・質保証機構(AHRQ)が開発した「小児医療の質の指標」と病院の管理データを用いて、これまでの研究では「質の高い外来診療によって回避できる可能性のある入院」を特定してきた。
このアプローチに基づき、著者らはイタリアにおける「小児胃腸炎入院率」を医療の質の指標として実証的検討を行った。
この研究では、入院率の低下はプライマリ・ケアレベルでの管理の改善と関連しており、小児のケアの質が全体的に向上していると仮定した。
研究の方法
AHRQの医療の質の指標のプロセスに従って、年齢の除外基準、診断コードの選択、入院の種類、および「小児胃腸炎入院率」の推定の方法論的な問題点を検討した。
データは、2009年1月1日から2011年12月31 日までの間に退院した 0~17 歳のイタリアの小児を対象にし、入院の地域変動を分析した。
非細菌性胃腸炎、細菌性胃腸炎、脱水症(胃腸炎の二次診断を含む)の診断による入院を検討した。
データソースは病院の退院記録データベースとした。
すべての割合を年齢別に層別化した。
研究の結果
研究期間中の非細菌性胃腸炎の小児入院は 61,130 例、細菌性胃腸炎は 5,940 例、脱水症は 38,820 例であった。
思春期の小児と比較して、1歳未満の小児は、非細菌性胃腸炎による入院の相対リスクは24倍だった。また、相対リスクは1~4歳児で14.5倍、5~9歳児で3.2倍に低下した。
全国レベルでは、細菌性胃腸炎の入院の割合は非細菌性と比較して少なかったが、脱水症の入院を含めると、地域間の診断コーディングに有意なばらつきがあり、それが本指標の地域的なパフォーマンスに影響を与えていることが明らかになった。
結論
広く応用するために、「小児胃腸炎入院率」の計算において、分子に細菌性胃腸炎と脱水症の診断、および生後3ヶ月未満の乳児を入れることを提案する。
また、年齢を調整し、日帰り入院を含めることを提案する。
今後、国レベルでの臨床パネルによる評価が、このような指標の適切な適用を判断し、政策立案者への提言を行うのに役立つかもしれない。
考察と感想
本文中にはデータの抽出条件なども記載されており、非常に参考になる論文でした。
一方で、胃腸炎の入院率を医療の質として置き換えるのはどうなのでしょうか。例えば、5歳未満くらいであれば、ロタウイルスワクチンの普及などがある程度は反映されるでしょう。あるいは、外来での経口補水液の摂取といった指導も多少は反映されるかもしれません。
一方で、胃腸炎の流行であったり、その地域での入院の閾値の違いであったり、そういった要素を対処するのは少し難しいかもしれないとも思ってしまいました。
まとめ
今回の研究は、イタリアにおける小児の医療の質の指標を検討した研究でした。
この研究では、胃腸炎による入院率を指標にして、地域毎のばらつきを検討していました。
類似の研究をもう少し探してみようと思います。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
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