今回は医療の質に関して報告された論文をご紹介しようと思います。
医療の質の指標は様々あるようですが、今回は小児の入院や外来患者を対象にした医療の質の指標を検討した論文をご紹介しようと思います。
- アメリカを対象に行われた研究
- 小児の入院・外来などの医療の質を計測した論文
アメリカからの報告です。
小児の外来・入院の医療の質はどう計測する?[アメリカ編]
研究の背景/目的
アメリカにおいて、小児の入院は年間600万件以上で、そのコストは年間500億ドルを占めている。このように、入院している小児は重要な患者集団であるが、入院患者における医療の質の指標は適用できない。
著者らは、レセプトデータを用いて、入院患者および外来患者の小児医療の質を評価するための指標を開発した。
研究の方法
著者らは、Agency for Healthcare Researchによって作成された、医療の質の指標を適応させて研究を行なった。
この指標は、以前に著者によって洗練された公開されている小児医療用の測定ツールである。
著者らは、小児に特有のコードおよび妥当性に関する文献を系統的にレビューした。
その後、著者らは4人の専門家を招集し、2段階の修正デルファイ・プロセスを経て各指標を評価した。
最後に、2000年と2003年のKids’ Inpatient Databaseを使用して、医療提供者レベルの医療の質の指標と地域レベルの医療の質の指標の全国推計値を作成した。
研究の結果
パネリストは、質の向上に有用か否かに基づいて、18の医療の質の指標を含めることを推奨した。
内訳として、13の病院レベル指標(合併症に基づく11、死亡率に基づく1、入院規模に基づく1の指標)と、予防可能な入院に関する5つの地域レベル指標が含まれていた。
18の指標のすべてについて、全国の割合は年によってほとんど変化しなかった。
ハイリスク層の割合は、全体のグループよりも著しく高くなっていた。
2003年において、褥瘡性潰瘍は3.12/1000であったのに対し、可動性に制限のある小児の場合は22.83/1000であった。
糖尿病の短期合併症は年齢とともに増加したが、胃腸炎の入院は年齢とともに減少した。
結論
予防可能な合併症と入院を追跡することは、地域レベルと国レベルの両方で質の改善努力に優先順位をつけるのに役立つが、コーディングの正確性を確認するためには追加の研究が必要である。
考察と感想
どんな指標を使用していたのか気になったので、本文を読みといたところ、以下の指標が使用されていました:
病院レベルの指標:
- 偶発的な穿刺や裂傷:医療行為中に偶発的に生じた切創・穿刺・穿孔・出血
- 褥瘡性の潰瘍
- 手術中に残った異物
- 医原性の気胸(新生児)
- 医原性気胸(新生児以外)
- 小児心臓手術後の死亡率
- 小児心臓外科の手術の症例数
- 術後の出血と血腫
- 術後の呼吸不全
- 術後の敗血症
- 術後の創傷の脱離
- 医療行為の関連する感染:主にカテーテル関連感染症
- 輸血反応
地域レベルの指標:
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気管支喘息の入院率
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糖尿病短期合併症入院率:ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群で入院
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胃腸炎の入院率
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虫垂炎穿孔による入院率
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尿路感染症の入院率
地域レベルの指標に関しても、入院の適応が地域によっても異なるので、難しいところではあります。
どのICD-9CM codeを使用したのか、procesure codeを使用したのか、個人的には知りたかったです。
まとめ
今回の研究は、アメリカにおける小児の医療の質の指標を検討した研究でした。
入院では13、外来(地域)では5の指標が掲げられていました。
類似の研究をもう少し探してみようと思います。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています
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