医療の質

アメリカにおいて、小児医療の質はどのくらいなのか?[2000年]

今回は医療の質に関して報告された論文をご紹介しようと思います。

医療は様々な地域、年齢などを対象に提供されています。「どこにいっても、そんなに変わらないのでは?」と感じる方がいるかもしれませんが、実の所、受診された医療機関などによってはその質にはばらつきがあります。

もちろん、良い医療、悪い医療と簡単に白黒つけられないものも多くありますが、その一方で、エビデンスレベルの高いと分かっている医療が行われていなかったり、禁忌となりうる医療が提供されてしまっているケースもあります。

この研究は5つの視点で検討されています:

  1.  第一に、子どもたちの医療の質は全体的にどの程度良いのか?
  2. 医療の種類(急性・慢性・予防)によって質に差があるか?
  3. 医療機能の連続性(スクリーニング、診断、治療、フォローアップ)によって、質に違いがあるか?
  4. 医療の質はケアの形態(病歴、身体検査、臨床検査やX線撮影、投薬、予防接種、教育、カウンセリング)によって異なるか?
  5. 質は臨床領域の種類によって異なるか?

 

ユーキ先生
ユーキ先生
現在はガイドラインも多数あり、医療の質は小児でも均質なのではないでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
自分たちの観測範囲以上に、医療のばらつきはあると思います。一緒に論文を読んでみましょう。

ポイント

  •  アメリカの小児を対象に行われた研究
  •  2000年の時点では、推奨レベルの医療を受けられた患者のばらつきは大きく、改善が必要であった

   アメリカからの有名な報告です。

アメリカにおいて、小児医療の質はどのくらいなのか?[2000年]

研究の背景/目的

包括的な研究が不足しているため、子どもに提供されるケアの質の低下の大きさについてはほとんど知られていない。

研究の方法

著者らは、小児科外来患者において、推奨されている医療がどの程度実施されているかを評価した。

質の指標は、RAND-UCLAの修正Delfi法を用いて作成した。

12の大都市圏から無作為に選ばれた小児1536人の保護者は、インフォームド・コンセントを得て、研究募集日以前の2年間において、小児を診察したすべての医療提供者から医療記録を入手した。

訓練を受けた看護師がこれらのカルテを抽出した。

複合質スコア(Composite quality score)は、(質が高いと)示唆される医療の提供回数を、全ての医療回数で割って算出した。

Dr.KID
Dr.KID
全体において、質が担保された医療が提供された割合、といった感じでしょうか。

研究の結果

カルテのデータによると、本研究の対象となった小児は、46.5%(95%信頼区間[CI]、44.5~48.4)が質が担保された医療ケアを受けていたと推定された。

  • 急性期の医療は67.6%(95%信頼区間、63.9~71.3)
  • 慢性期の医療は53.4%(95%信頼区間、50.0~56.8)
  • 予防医療は40.7%(95%信頼区間、38.1~43.4)

が適切な医療を医療を受けていた。

質は臨床領域によって異なり、

  • 上気道感染症では92.0%(95%CI、89.9~94.1)
  • 青年期の予防ケアでは34.5%(95%CI、31.0~37.9)

と推奨される医療のアドヒアランス率に幅があった。

結論

小児に提供されるケアの質の欠如は、以前に報告された成人に対するものと同程度の大きさであるようである。

これらの明らかな医療の質の欠如を減らすためには、戦略が必要である。

考察と感想

小児医療の質における明らかな欠陥の大きさは、以前に報告された大人の医療の質の報告と同程度でした。

一方で、この研究は1996年から2000年までの記録に基づいていまずが、この期間以降、ケアの質が大幅に改善されたとは考えにくいと著者らも考えているようです。

また、アメリカには医療保険への加入(高いため)という障壁もあります。確かに保険を拡大して子供に医療を提供できるインフラ作りは重要ですが、それだけでなく医療の質を向上させなければいけないと考えているようです。

Dr.KID
Dr.KID
医療制度の複雑さと多様性を考えると、単純な解決策は存在しないのだろうと思います。

まとめ

今回の研究は、アメリカにおける小児医療の質を検討した研究です。

2000年時点の結果ですが、およそ半分の受診者が推奨されるレベルの医療を受けておらず、改善が必要という内容でした。

成人版と同じような結果ですね。

医療の質の関連書籍はこちら↓↓

created by Rinker
¥4,180
(2024/11/21 15:46:50時点 Amazon調べ-詳細)

created by Rinker
¥3,300
(2024/11/21 15:46:51時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。