今回は医療の質に関して報告された論文をご紹介しようと思います。
医療は様々な地域、年齢などを対象に提供されています。「どこにいっても、そんなに変わらないのでは?」と感じる方がいるかもしれませんが、実の所、受診された医療機関などによってはその質にはばらつきがあります。
もちろん、良い医療、悪い医療と簡単に白黒つけられないものも多くありますが、その一方で、エビデンスレベルの高いと分かっている医療が行われていなかったり、禁忌となりうる医療が提供されてしまっているケースもあります。
この研究は5つの視点で検討されています:
- 第一に、子どもたちの医療の質は全体的にどの程度良いのか?
- 医療の種類(急性・慢性・予防)によって質に差があるか?
- 医療機能の連続性(スクリーニング、診断、治療、フォローアップ)によって、質に違いがあるか?
- 医療の質はケアの形態(病歴、身体検査、臨床検査やX線撮影、投薬、予防接種、教育、カウンセリング)によって異なるか?
- 質は臨床領域の種類によって異なるか?
- アメリカの小児を対象に行われた研究
- 2000年の時点では、推奨レベルの医療を受けられた患者のばらつきは大きく、改善が必要であった
アメリカからの有名な報告です。
アメリカにおいて、小児医療の質はどのくらいなのか?[2000年]
研究の背景/目的
包括的な研究が不足しているため、子どもに提供されるケアの質の低下の大きさについてはほとんど知られていない。
研究の方法
著者らは、小児科外来患者において、推奨されている医療がどの程度実施されているかを評価した。
質の指標は、RAND-UCLAの修正Delfi法を用いて作成した。
12の大都市圏から無作為に選ばれた小児1536人の保護者は、インフォームド・コンセントを得て、研究募集日以前の2年間において、小児を診察したすべての医療提供者から医療記録を入手した。
訓練を受けた看護師がこれらのカルテを抽出した。
複合質スコア(Composite quality score)は、(質が高いと)示唆される医療の提供回数を、全ての医療回数で割って算出した。
研究の結果
カルテのデータによると、本研究の対象となった小児は、46.5%(95%信頼区間[CI]、44.5~48.4)が質が担保された医療ケアを受けていたと推定された。
- 急性期の医療は67.6%(95%信頼区間、63.9~71.3)
- 慢性期の医療は53.4%(95%信頼区間、50.0~56.8)
- 予防医療は40.7%(95%信頼区間、38.1~43.4)
が適切な医療を医療を受けていた。
質は臨床領域によって異なり、
- 上気道感染症では92.0%(95%CI、89.9~94.1)
- 青年期の予防ケアでは34.5%(95%CI、31.0~37.9)
と推奨される医療のアドヒアランス率に幅があった。
結論
小児に提供されるケアの質の欠如は、以前に報告された成人に対するものと同程度の大きさであるようである。
これらの明らかな医療の質の欠如を減らすためには、戦略が必要である。
考察と感想
小児医療の質における明らかな欠陥の大きさは、以前に報告された大人の医療の質の報告と同程度でした。
一方で、この研究は1996年から2000年までの記録に基づいていまずが、この期間以降、ケアの質が大幅に改善されたとは考えにくいと著者らも考えているようです。
また、アメリカには医療保険への加入(高いため)という障壁もあります。確かに保険を拡大して子供に医療を提供できるインフラ作りは重要ですが、それだけでなく医療の質を向上させなければいけないと考えているようです。
まとめ
今回の研究は、アメリカにおける小児医療の質を検討した研究です。
2000年時点の結果ですが、およそ半分の受診者が推奨されるレベルの医療を受けておらず、改善が必要という内容でした。
成人版と同じような結果ですね。
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