- 川崎病にステロイドはNG
とまで言われていた時代がありました。
詳細は省略しますが、1980年代に行われた観察研究や症例集積などで、ステロイドを使用した場合の冠動脈病変が多かったのが影響しているようです。
2010年前後にいくつか研究が行われて、このトレンドは大きく変わりました。今回は、その1つの研究をご紹介しようと思います。
- 2012年日本からの報告
- 重症型の川崎病に対し、ステロイド併用療法の有効性を検証
- ステロイドを併用すると、冠動脈瘤のリスクが減少した
日本から報告された観察研究ですね
研究の概要
背景:
これまでのエビデンスから、ステロイドが川崎病の重症例における初期治療において、有益である可能性が示されています。
アスピリン・免疫グロブリン静注に、プレドニソロンを併用した治療法が、重症川崎病患者において冠状動脈病変のリスクを低下させるか、をこの研究では、評価しています。
方法:
2008年9月29日〜2010年12月2日に日本の74病院で多施設ランダム化比較試験を実施した。
重症型の川崎病患者に、
- 従来の治療法(IVIG + ASA)
- 従来の治療にステロイドを併用(IVIG + ASA + PSL)
のいずれかを無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、冠動脈病変の発生率で、解析はITTで行われた。
結果:
125人の患者をIVIG + PSL群に、 123人の患者をIVIG群に無作為に割り振った。
冠状動脈病変のリスクは、IVIG + PSL群で、IVIG群より低かった(4例 [3%] vs 28例 [23%];リスク差20%、95% CI 12%-28%)。
重篤な有害事象は両群間で類似しており、IVIG + PSL群では高コレステロール2名と好中球減少症1名を、IVIG群では高コレステロール1名と非閉塞性血栓1名を示した。
結論:
標準治療へのプレドニゾロンの追加は、日本における重症川崎病患者の冠動脈アウトカムを改善させる可能生がある。
他の人種・民族において、川崎病に対するステロイド併用療法のさらなる研究が必要である。
考察と感想
ランセットに掲載された論文で、ほとんどの先生方はご存知じゃないでしょうか。
まとめ
日本で行われた多施設合同ランダム化比較試験になります。
川崎病の重症例において、ステロイド併用療法は、冠動脈アウトカムのリスクを大きく減らすことが示唆されています。
川崎病の治療が大きく変わった、重要な論文と私は思います。
川崎病のこちらの本、読んでみたいですね↓↓
Dr. KIDの書籍(医学書)
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/20 00:57:26時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について