科学的根拠のある子育て・育児

乳幼児の下痢において、乳糖はさけるべきなのか?[エジプト編]

  •  下痢の時、乳糖を避けるように

という指導もあります。

急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、炭水化物の吸収が悪くなることが知られています。このため、このような指導がされているのでしょう。

今回は、この方法にメリットがあるのかを触れた論文の解説をしようと思います。

ポイント

  •  小児の下痢の時、乳糖を避ける必要があるか検討した研究
  •  乳糖を避けると、下痢の期間や量が減少する傾向
  •  人種差の考慮は必要かもしれない
マミー
マミー
下痢のとき、乳糖を避ける必要がありますか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文を見て、一緒に考えていきましょう。

乳糖を避けるべきかは、様々な研究で検討されており、今回説明した研究のみでなく、他の研究もみて、総合的な判断が必要と考えています。

 研究の概要

今回は、小児の下痢において、乳糖を避けるべきか検討した研究になります。

エジプトで、1994-95年に報告されたランダム化比較試験になります。

 対象患者

対象となったのは、

  •  3-18ヶ月の乳児
  •  胃腸炎で入院
  •  下痢の期間は受診時に7日以内

の患者が対象です。

治療

治療は、点滴による脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。

  1.  乳糖を含む大豆由来のミルク
  2.  乳糖を含まない大豆由来のミルク

となります。

研究結果

それぞれのグループに94人 vs. 90人ずつが参加しています。

結果は以下の通りでした

1. 下痢の期間

下痢の期間は、以下の通りでした。

グループ 下痢の期間
平均(範囲)
1. 乳糖を含む 39時間
(28)
2. 乳糖を含まない 23時間
(21)

乳糖を含まないほうが、下痢の期間はやや短いようですね。

2. 体重の変化

体重変化は以下の通りでした:

グループ 体重変化
平均(範囲)
1. 乳糖を含む +4.3%
(2.5)
2. 乳糖を含まない +4.2%
(2.3)

乳糖の有無は、体重変化にはあまり影響がなさそうです。。

3. 下痢の量について

下痢の量を比較しています:

グループ 下痢の量
平均(範囲)
1. 乳糖を含む
g/kg/hr
6.2
(2.3)
2. 乳糖を含まない
g/kg/hr
5.2
(2.1)

乳糖を含まないほうが、下痢の量はやや少ないようですね。

 感想と考察

今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、乳糖を避けたほうが、下痢の期間はやや短い印象でした。

他の研究とは異なり、大豆由来のミルクを基本に、乳糖がある vs. ない、で比較しているところが、ユニークな研究と思いました。

類似のRCTの研究でも、類似の結果があるようです。
乳糖分解酵素の人種差も気になりますね。

Dr.KID
Dr.KID
過去の研究も参照する必要があります。

まとめ

今回は、乳児の下痢に対して、乳糖を避けるべきかを検討しています。

乳糖を避けた場合、下痢の期間はやや短縮する傾向にありました。

類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。