- 「投資やってるのですか?」
- 「先生は統計学や疫学で数式に強いので、投資したらすごそうですね」
など、質問される機会があります。
誤解がないように最初に言っておきますが、統計学や疫学をしているからと言って、投資に向いているとは思いませんし、やはり別の知識が必要と思います。
医師は若い時から割と高給取りなのもあり、お金遣いが荒い方がそこそこいます。
周りの友人に影響されて、ついつい高いものを買ってしまったり、身の丈に合わない衣食住をしてしまう方も多いです。
以前、こちらの記事でも少し触れましたが、私の周りにいる友人・先輩・後輩をみても
- 昨日当直したけれど、帰りに20万円のパソコンをなぜか衝動買いした
- 軽井沢にゴルフに行ったけど、ショッピングモールで15万ほど衝動買いした
- 学会のホテルはスイートにした
- 結婚するから〇千万する新築タワーマンションをローン購入した
- 預金はないが、外車が欲しかったのでB●Vをローン購入した
- とりあえず外貨預金やトルコリラ、仮想通貨を買ってみた
など、目を覆い、耳を疑いたくなるようなストーリーを時々聞きます。
実は医師のお金のリテラシーはかなり低いと私は疑っています。
そんなところに、この本を見かけて読んでみて、すごく良かったので書評を書こうと思います。
- 医師だけれども、資産運用が分からない
- お金のリテラシーについて知りたい
こんな方々が対象と思います。
1. 収入編
こちらには、
- 医師の将来の年収は?
- 給与明細と源泉徴収票
- 医師における常勤 or 非常勤の法律的な定義、メリット・デメリット
- 人生プラン:お金 vs. 医師のやりがい
- 勤務医 vs. 開業医
- 医局に入るべきか?
- 医師と副業について
について詳しく書かれています。
簡単に要約しますと、お金は自分自身や家族を幸せにするためのツールである以上、「お金は汚いもの」と汚豊的な考え方に固執するのは得策ではありません。実は「汚いもの」と考える人は結構います。
まず、年齢別で医師の平均年収を知り、(特に中堅以上の医師では)常勤と非常勤ではどのくらいの差があるのか、どのような病院で働くと不必要に消耗しなくて良いか書かれています。
著者は2035年くらいから医師の給与は下がっていく可能性が高いと考えており、医局に所属するのか、フリーランスでいるのか、開業をするのか、それぞれのメリット・デメリットをよく考える必要性を説いています。
例えば、開業した場合、収入は増えるかもしれないが、責任とストレスが重くのしかかります。
一方、医局に属することで抱える収入毀損リスクであったり、家族との時間が失われる可能性もあります。
こういったトレード・オフを考え直す良いきっかけになると思いました。
また、解決法として、複数の収入源を確保し、自分が寝たきりになっても、家族にキャッシュフローがあるような収入源を確保する(投資など)ことを提唱しています。
2. 支出編
- 奨学金について
- 医師は金遣いが荒い人種
- なぜか苦しい医師の家計
- クレジットカードを作る
- 電子マネーは使うべきだが仮想通貨は論外
- 子供の学費はバカにできない
- 学会に支払う費用と交通費に気を配るべし
- マイホーム vs 賃貸
- 飲み会はほどほどに
正直、一番ツボにハマったのがこの章です。
「医師でもきちんと堅実にやりくりしないと、貯蓄ができない。」
これ本当ですし、医師の金銭感覚の特徴を見事に捉えていると思います。例えば…
- 誘惑が多い:外車を買いたい、見栄やステータス
- 食費が多い:高価な食品を買う傾向にある
- 高い医学書を買いすぎ
- 高級な住宅ローン
- 教育費かけすぎ:身の丈を超えた教育費
などが該当します。
私がかつて出会ってきた、マネーリテラシーの低い医師を何人も思い出してしまいました…。
具体的な対策法として、家計簿をつける、消費のメリハリをつける、マネーリテラシーを高める(投資の勉強)、返戻率の高い学資保険を考える、JRエクスプレス予約を使用するなど、詳細に記載されています。
3. 節税編
- 確定申告について:節税や使える控除を知る
- ふるさと納税について
- iDeCo
こちらでは、確実にできる節税方法について書かれています。
例えば、年収が上がるほどふるさと納税(最強のバリュー投資)できる金額が増える点、iDecoは税金の額を減らせるのが最大のメリット、選ぶ際のポイントなど実践的なことが書かれています。
4. 資産運用編
- 貯蓄とリスク
- 資産運用の為にすべきこと
- 理解できない金融商品には手を出さない
- 株式投資のメリットとデメリット
医師の資産運用の特徴として、理解できない金融商品にイメージだけで飛びついたり、「よくわからないから、とりあえずリスクゼロ」の元本保証という両極端が多い印象です。
こちらの章では、金を持った無知な医師はただのカモであることを前提に、失敗しやすい医師の特徴、商品や投資のメリット・デメリットを、著者の失敗談を交えながら記載されています。
5. 保険編
- 医師賠償責任保険について
- 医療保険(民間の入院保険)に入るべきか
- 生命保険に入るべきか
こちらでは、上記の保険について簡単に記載されていました。
例えば、訴訟に巻き込まれる確率から医師賠償責任保険をどうするか、残された資産だけで家族が暮らしていけるかどうかという視点で生命保険をどうするか、といった点が書かれています。
6. その他
- 謝礼について
- 億り人ドクター
- 他人からの儲け話は信じない
- あなたの選ぶ診療科について
こちらの章には雑多なストーリーが多いですが、世の中には化け物(医大生の億り人)がいる、働き方を考えて診療科を選ぶのも1つなど、いろんな人やいろんな考え方があるのを知ることができます。
この本のその他の良かった点
- 金医くんとドクターKの会話がウケる
- 現状の医師に即してストーリーが書かれている
- 特にブラック病院に勤務、産前産後・育児休暇の時の女医の立場が考えて書かれている。
など、様々な立場に基づいて書かれている点だと思います。
特にこれから医師になる人、初期研修が終わった人を対象に書かれていますが、卒後10年前後くらいまでの医師は読んでおいて損はないと思います。
この本の悪かった点
ほとんど悪かった点はないのですが、本にもある通り、やはりターゲット層は医師と感じてしまいました。
他の業界の方が読んでも勉強になる点はたくさんあるとは思いますが、あくまで医師の立場を中心に書かれています。
また、投資や保険などお金のことを一通り知っている人は少し物足りなく感じるかもしれません。
ですが、復習であったり、他の人の意見を知る意味では良いと思います。
あとは、例えば株式投資について詳しく知りたい方など、興味の対象が狭い方も、もう少し深く掘り下げてほしいと感じる方がいるかもしれません。
そういった方は、同じ著者の書いている別の本を追加で購入してみても良いでしょう。
こちらの本は私も正月に読むと決意して、積ん読のままなので、また読んで書評を書いてみようかと思っています。
コンサバに投資・節税をしたい人は、インデックス投資を考えてみても良いかもしれません。
私のオススメは山崎元さんの本です。こちらにはインデックス投資やiDeCoのことが記載されています。
投資家からの説明を知りたい方は、こちらの本が良いかもしれませんね。私のお気に入りの本です。
「中級者」とありますが、証券口座をすでに開いている方なら、難なく読めると思います。
あとは、スミレ(@sumire100m)さんのブログも初心者向けに株式投資について非常に丁寧に解説されており、オススメです。
アメリカ株に興味のあるかたは、たぱぞうさん(@tapazou29 )のブログがおすすめです。