RSウイルスは非常に奥深いウイルスです。
複数回の感染は当たり前ですし、生後6ヶ月未満に感染すると重症化して入院率が上昇します。母親からもらった受動免疫が多ければ予防効果があ流とは考えられてはいるのですが、それでも感染する時は感染します。
少しクラシックな論文ですが、これらの事実を明らかにしようと試みられた研究が1970年代にありますので、こちらで報告させていただきます。
- RSウイルス感染による入院率をみた研究
- 入院率は1歳未満で 4.7/1000、6ヶ月未満で7.0/1000
- 母体からの抗体価が高いほど感染リスクは下がるが、100%の予防ではない
研究の方法
今回の研究は、アメリカで1975〜1979年に行われたコホート研究になります
対象となったのは、
- ヒューストンの病院に受診
- RSV感染と判明した
乳幼児となります。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- 年齢・性別による入院率
- 重症度
などをみています。
研究結果と考察
ほとんどの入院患者は肺炎または細気管支炎と診断されています。
95%は1歳未満で、75%は5ヶ月未満の乳児・新生児だったようです。
1歳未満の入院率
層 | Rate | |
男 | 102/20,852 | 4.9 |
女 | 89/20,060 | 4.4 |
合計 | 191/40,912 | 4.7 |
入院率は男女差が微妙にあり、男児の方が0.5/1000ほど多いようです。
164名(81.1%)は6ヶ月未満の小児で、この月齢の入院率は7/1000を推定されているようです。
抗体価の比較
流行前と流行期で、RSV感染者 vs. ランダムサンプルで抗体価を比較しています。6ヶ月未満の小児が対象です。
流行前
Titer | RSV+ (N=45) |
RSV- (N=339) |
16 | 3 | 4 |
32 | 4 | 33 |
64 | 11 | 95 |
128 | 12 | 102 |
256 | 12 | 66 |
512 | 1 | 24 |
1024 | 2 | 12 |
2048 | 0 | 3 |
幾何平均 | 97 | 125 |
RSウイルスの感染していない乳児の方が、抗体が高い傾向にありました。
流行期
Titer | RSV+ (N=23) |
RSV- (N=236) |
16 | 3 | 0 |
32 | 6 | 17 |
64 | 6 | 41 |
128 | 5 | 72 |
256 | 3 | 76 |
512 | 0 | 20 |
1024 | 0 | 10 |
2048 | 0 | 0 |
幾何平均 | 62 | 158 |
流行期でも同じような傾向があります。
RSVに感染する小児の方が、抗体価は低い傾向にあるのが分かります。
感想と考察
クラシックな論文でしたが、RSウイルスの疫学を知る上で重要なものと思います。
入院率は1歳未満、特に6ヶ月未満で高いのが分かります。また、母体からの抗体は予防効果はありそうなデータでしたが、抗体価が高いからと言って、必ず予防できるわけではなさそうです。
まとめ
RSウイルスによる入院は、1歳未満(特に6ヶ月未満)に多い傾向にありました。
母体からの抗体は予防効果がありそうですが、高いからと言って必ず予防できるわけではなさそうです。
- RSウイルス感染による入院率をみた研究
- 入院率は1歳未満で 4.7/1000、6ヶ月未満で7.0/1000
- 母体からの抗体価が高いほど感染リスクは下がるが、100%の予防ではない