RSウイルスは小児でよく感染するウイルスで、2歳までにほぼ100%の小児が感染します。
重症度の幅は広く、軽い風邪症状から入院が必要な重症まであります。詳しくはこちらの記事で解説しています:
今回は、RSウイルスによる重症化を年齢別にみたシステマティックレビューとメタ解析をみつけたため、そちらをご紹介させていただきます。
- RSウイルスによる入院率と死亡率をみた研究
- 1歳未満は入院率が高く、20ケース/1000人年ほど
- 死亡率は6ケース/1000人年ほど
Stein et al. Respiratory Syncytial Virus Hospitalization and Mortality: Systematic Review and Meta-Analysis. Pediatric Pulmonology 52:556–569 (2017)
研究の方法
今回のsystematic reviewとmata-analysisは、
- Pubmed
- Embase
を使用して行われています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- RSウイルスによる入院率
- RSウイルスによる死亡率
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に55の研究がシステマティックレビューの対象となっています。
年齢別にみた入院率
アフリカ(ケニア、南アフリカ、モザンビーク)、アジア(香港、インド、タイ、ベトナム、バングラディッシュ、台湾、韓国)、アメリカ、欧州(デンマーク、ドイツ、フランス、オランダ、イギリス)、南アメリカ(アルゼンチン、チリ、グアテマラ)、オーストラリアが対象になっています。
年齢別にみた入院率は以下の通りでした:
年齢 | 入院率 (/1000PYs) |
(95%CI) |
< 6ヶ月 | 20.01 | (9.65-41.31) |
< 12ヶ月 | 19.19 | (15.04-24.48) |
< 24ヶ月 | 13.42 | (8.20-21.89) |
24-60ヶ月 | 1.71 | (0.53-5.46) |
< 60ヶ月 | 4.37 | (2.98-6.42) |
早産児 | 63.85 | (37.52-109.7) |
入院率は1歳未満の小児が多く、2歳以上になるとかなり低下するのがわかります。
年齢別にみた致死率
アフリカ(ケニア、南アフリカ、モロッコ、モザンビーク、エジプト)、アジア(中国、韓国、台湾、インド、インドネシア)、スイス、アメリカ、ラテンアメリカ(メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、コロンビア、グアテマラ)、中東(サウジアラビア、ヨルダン)からデータを集めています。
RSウイルスによる致死率は以下の通りでした:
年齢 | 死亡率 (/1000PYs) |
(95%CI) |
< 6ヶ月 | N/A | N/A |
< 12ヶ月 | 6.60 | (1.85-16.93) |
< 24ヶ月 | 1.04 | (0.17-12.06) |
24-60ヶ月 | 4.68 | (1.23-14.70) |
< 60ヶ月 | N/A | N/A |
早産児 | 6.21 | (37.52-109.7) |
この結果ですが、先進国としてはやや高い印象ですね。
例えば、オーストラリアやヨーロッパでは死亡率はほぼ0でして、アメリカでも0.9/1000程度です。
感想と考察
RSウイルスによる入院率・致死率をみた研究です。世界的なトレンドを知るにはよい指標かもしれませんが、国によって医療へのアクセスや、医療レベルが異なりため、異質性の高いデータでした。
このため、先進国よりは高いけれども、途上国よりは低いという印象です。
残念なことに、これらのデータに日本のものはありません。日本の疫学研究がいかに脆弱であるか、同様の研究においても露呈してしまったいる印象ですね。
まとめ
RSウイルスの入院率と死亡率に関する世界的な平均を推定した研究でした。
6ヶ月〜1歳未満は入院率は他の年齢より高く、注意が必要でしょう。
- RSウイルスによる入院率と死亡率をみた研究
- 1歳未満は入院率が高く、20ケース/1000人年ほど
- 死亡率は6ケース/1000人年ほど
- 先進国はこれよりもっと低い値と思われる