- RSウイルスは2歳までに、ほぼすべてのお子さんが感染します
ひょっとしたら小児科外来で、こんな説明がされているかもしれません。
おそらく「みんな感染するウイルスですので、過剰に心配しないでください」という意図も込められているのかもしれません。月齢にもよりますが、1〜2歳以上であれば、肺炎や急性細気管支炎のため入院が必要になるケースは、かなり減ります。一方で、生後6ヶ月未満は注意が必要かもしれません。
今回は、最初の発言の根拠となるクラシックな論文をご紹介します。
- RSウイルスは、2歳までにほぼ100%の小児が感染する
- 再感染することもある
- 月齢・感染回数が上昇すると、重症化のリスクが低下する
研究の方法
対象となったのは、Houston Family Studyに参加した小児です。この研究では、出生時に登録し、その後5年間追跡した出生コホートになります。
アウトカムについて
コホートを追跡して、
- RSウイルスの感染率・再感染率
- 下気道感染
などを見ています。
研究結果と考察
125名が参加し、5年間で345 person-yearsの追跡が行われています。
RSウイルスの感染率の推移
RSウイルスの感染率の推移を見てみましょう。このデータでは、初回と再感染は区別していません。
月齢 | 感染率 | 下気道炎の率 |
0-12 | 68.8 | 22.4 |
13-24 | 82.6 | 13.0 |
25-36 | 46.2 | 10.8 |
37-48 | 33.3 | 7.7 |
49-60 | 50 | 0 |
純粋な感染率を見ると、1歳代が最も高かったようですね。一方で、細気管支炎や肺炎は12ヶ月以下が最も高かったようです。
初感染について
初感染に関しては以下の通りです:
月齢 | 初感染 |
0-12 | 68% |
13-24 | 97.1% |
25-36 | 100% |
初感染はほぼ2歳までの100%に達しているようですね。このデータが根拠なのでしょう。
再感染率
月齢 | 再感染率 | 下気道感染率 |
13-24 | 75.9 | 19 |
24-36 | 45.3 | 10.9 |
37-48 | 33.3 | 7.7 |
49-60 | 50.0 | 0 |
(/100 child-years)
再感染率は年齢とともに、少しずつ下がっている印象ですね。特に、細気管支炎や肺炎といった下気道感染の率は減っています。
感染回数は、再感染に影響するか
感染の回数が増えると、再感染のリスクは減る傾向にあるようです。
感染回数 | 再感染 | 下気道感染 |
1 | 55.9% | 14.7% |
2 | 33.3% | 3.3% |
当たり前といえばそうなのですが、感染回数が増えるに従って、再感染のリスクは下がっていそうです。下気道感染のリスクも、2回目、3回目の感染では低くなっているのが分かります。初回感染では18.6%でした。
抗体とRSウイルス感染
抗体価 | 再感染率 | 下気道感染 |
8倍以下 | 82.6% | 21.7% |
16-64倍 | 53.3% | 10.0% |
128倍以上 | 11.8% | 0% |
抗体価が上昇すると、再感染率は下がる傾向にはあるようですね。下気道感染率も低下しているのが分かります。
感想と考察
私たちがRSウイルス感染を説明する際に必要なデータの多くは、ここから始まっているようですね。
- 2歳以下でほぼ100%が感染する
- 再感染は起こりうる
- 年齢が上がると、重症化のリスクはかなり減る
といったお話を外来ですることもありますが、まさにその内容がこの論文にあったようですね。
まとめ
今回は、RSウイルスの疫学を見た古典的な論文紹介をしました。
RSウイルスは2歳までに、ほぼ100%の小児が感染します。再感染することもありますが、月齢とともに重症化のリスクは低下していきます。
- RSウイルスは、2歳までにほぼ100%の小児が感染する
- 再感染することもある
- 月齢・感染回数が上昇すると、重症化のリスクが低下する