科学的根拠のある子育て・育児

乳児の下痢で乳糖を含まないミルクを与えるべき?[南アフリカ編]

  •  下痢の時、ミルクを薄めましょう
  •  乳糖を避けましょう

という指示もあるようです。

急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、さらに炭水化物やタンパク質、脂質の吸収が悪くなることが知られています。このため、ミルクを薄め、乳糖を避けた方がよいのではないか、と必要性を感じる保護者や医療者がいるようです。

今回は、この方針に科学的根拠があるか検討した論文を解説してみようと思います。

先に結論とポイントから述べましょう。

ポイント

  •  乳児が下痢の時、乳糖を避ける必要があるか検討
  •  乳糖を避けても、ほとんど排便回数や下痢の持続期間に影響しない
マミー
マミー
下痢のとき、乳糖を避けるべきですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文を見て、一緒に考えていきましょう。

基本的に、胃腸炎のとき、乳糖を避けるべきかは議論が分かれています。

 研究の概要

今回は、小児の下痢において、乳糖を避けたほうがよいか検討した研究になります。

1981年に南アフリカから報告されたランダム化比較試験になります。

 対象患者

対象となったのは、

  •  胃腸炎で入院
  •  乳児
  •  下痢が1日5〜15回ある
  •  胃腸炎になり48時間以内

乳幼児が対象です。

治療

治療は、24時間、脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。

  1.  通常のミルク
  2.  大豆からできた乳糖を含まないミルク

のいずれかをランダムに割り当てています。

薄めたミルクのグループは、50%、100%と24時間毎に濃度を上げているようです。

大豆由来で乳糖を含まないミルクの例として、ボンラクトがあります(推奨ではありません):

ボンラクトI
和光堂

研究結果

最終的に112人が参加しています。

背景は以下の通りでした:

乳糖 含まない
N = 56
含む
N = 56
週齢 26.3 32.3
体重 6.8kg 7.65kg

結果は以下の通りです:


(原著より抜粋)

下痢の回数は、ほとんど変わっていません。

下痢が止まるまでの時間を比較しています。

こちらも、ほとんど違いはありません。どちらかというと、乳糖ありのグループのほうが早く止まっているようにも見えます。

 感想と考察

今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、乳糖を避けても、下痢の回数や期間はほとんど変わらない印象です。

Dr.KID
Dr.KID
同じような研究がたくさん行われています。

まとめ

今回は、乳児の下痢に対して、乳糖を避けるべきかを検討しています。

乳糖を避けても、下痢の回数や期間には違いはありませんでした。

類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/20 01:07:57時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

 

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。
RELATED POST