今回は、乗り物酔いに対して、繰り返しの曝露や呼吸のコントロールによって「慣れ」が促進されるかどうかを検討した研究した論文をご紹介します。
- 乗り物酔いの症状を軽減するため、呼吸をコントロールすることと、音楽を聴くことが、効果があるか検討した研究
- 呼吸をコントロールすることと音楽のオーディオテープは、どちらも乗り物酔いに対し予防効果があった
- これらの非薬理学的対策は、乗り物酔い予防薬とは異なり、実施が容易であり副作用もない点に利点があります。
Yen Pik Sang FD, Billar JP, Golding JF, Gresty MA. Behavioral methods of alleviating motion sickness: effectiveness of controlled breathing and a music audiotape. J Travel Med. 2003 Mar-Apr;10(2):108-11.
2003年にUKから公表されたようです。
乗り物酔いの予防に音楽を聴くのは有効?[UK編]
研究の背景/目的
乗り物酔いに制吐剤が使用されることがあるが、副作用の懸念がある。このため、行動学的な対策は相対的に有利であるかもしれないが、確立された方法はほとんどない。
本研究の目的は、乗り物酔いの症状を軽減するためにデザインされ、呼吸をコントロールすることと、音楽(オーディオテープ)を聴くことが、乗り物酔いに対する耐性を高める効果があるか検討することであった。
研究の方法
24名の健常者を対象に、回転するターンテーブル上で吐き気を催すCoriolis刺激を、
- 「呼吸をコントロールすることに集中しながら」
- 「音楽のオーディオテープを聴きながら」
- 「何もしないで(コントロール)」
の3つの条件で行った。
この3つの条件は、各被験者が1週間の間隔で同じ時間帯に実施した。
乗り物酔いの評価は、30秒ごとに行い、軽度の吐き気のレベルに達した時点で、被験者は呼吸のコントロールを開始するか、音楽のオーディオテープを聴いた。
中等度の吐き気が生じた時点で運動を中止した。
研究の結果
中等度の吐き気が発生するまでに耐えられる分単位の平均(+/-SD)運動暴露時間は、コントロール(9.2 +/- 5.9分)に比べて、呼吸のコントロール(10.7 +/- 5.6分)と音楽(10.4 +/- 5.6分)で統計学的に有意に長く(p <.01)なった。
結論
呼吸をコントロールすることと音楽のオーディオテープは、どちらも乗り物酔いに対して有意な保護をもたらし、その効果も同様であった。
これらの非薬理学的対策は、スコポラミンの経口投与などの標準的な乗り物酔い防止薬の半分程度の効果しかないが、実施が容易であり副作用もない。
考察と感想
回転するターンテーブルでの実験とのことで、かなりハードであった気がしますが、乗り物酔いの再現を短時間で行うために、あえてそういう設定にしたのでしょう。
呼吸を整えたり、音楽を聴くというのは、気を紛らわすのによかったのでしょうか。
著者らのいうように、薬と比べて副作用がないですし、特に音楽を聴くだけなら、容易な気がします。
まとめ
乗り物酔いの症状を軽減するため、呼吸をコントロールすることと、音楽を聴くことが、効果があるか検討した研究でした。
呼吸をコントロールすることと音楽のオーディオテープは、どちらも乗り物酔いに対し予防効果があったようです。
これらの非薬理学的対策は、乗り物酔い予防薬とは異なり、実施が容易であり副作用もない点に利点があります。
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