近年、アレルギー性疾患の患者数が増加し、特に若年層においてアレルギー症状の改善が求められています。そのため、効果的な治療法の開発が重要となっています。舌下免疫療法(SLIT)は、アレルギー性鼻結膜炎の治療法の一つとして注目されており、その有効性に関する研究が増えています。
しかしながら、これまでの研究では、若者における薬剤摂取に関するデータが十分に報告されていないことが課題となっています。そこで、本論文では、「若者における舌下免疫療法:無作為化臨床試験における服薬遵守」と題し、若者におけるSLITの遵守状況を調査し、遵守に影響を与える要因を特定することを目的としています。
若者における舌下免疫療法:無作為化臨床試験における服薬遵守[オランダ編]
研究の背景/目的
効果的な治療には、服薬が必要不可欠です。舌下免疫療法(SLIT)の有効性に関するいくつかの試験が若者を対象に行われていますが、薬剤摂取に関するデータを含むものはほとんどありません。
鼻結膜炎を持つ若者において、SLITへの服薬遵守を定量化し、遵守に影響を与える要因を特定することを目的としました。
研究の方法
花粉症を持つ204人の若者(6~18歳)が無作為化比較試験に参加し、2年間、イネ花粉エキスまたはプラセボを使用しました。試験の主な結果は、第2のイネ花粉シーズンにおける平均日次鼻結膜炎症状スコアでした。
フォローアップを完了した参加者は、研究プロトコルに遵守していると考えられました。薬剤摂取への遵守は、研究薬の重量測定によって評価されました。フォローアップを完了し、処方された薬剤の80%以上を使用した参加者は、薬剤摂取に遵守していると考えられました。患者、疾患、治療関連の要因が分析されました。
研究の結果
154人の若者が研究を完了しました。中断の主な理由は、スケジュール通りに薬を服用できないことでした。中断した参加者は、年齢が高く、薬の指示に従うのが難しく、治療効果の全体的な評価が低かったです。治療群間での中断数や理由には差がありませんでした。
全体で、参加者の77%が薬剤摂取に遵守していました。自己申告による遵守率は99%でした。遵守しない参加者は、試験前に症状が重かったです。症状スコアは、遵守する参加者と遵守しない参加者の間で差がありませんでした。遵守している参加者も遵守していない参加者も、真の治療群とプラセボ群との間で症状スコアに差は見られませんでした。
結論
研究プロトコルと薬剤摂取への遵守は良好でした。中断は年齢、治療効果の評価、および薬剤指示に影響を受けました。薬剤摂取への不遵守は、試験前の疾患の重症度に影響を受けました。SLITの無効性は、不遵守によるものでは説明できませんでした。
考察と感想
この研究では、鼻結膜炎を持つ若者における舌下免疫療法(SLIT)への遵守を評価し、遵守に影響を与える要因を特定することを目的としています。研究の結果から、研究プロトコルと薬剤摂取への遵守は全体的に良好であることが示されました。ただし、中断に関しては年齢、治療効果の評価、および薬剤指示が影響を与えていることがわかりました。
遵守していない参加者は試験前に症状が重かったものの、遵守する参加者と遵守しない参加者の間で症状スコアに差はありませんでした。これは、治療の効果が個々の参加者の症状の重さや遵守に関わらず一定であることを示唆しています。また、SLITの無効性は遵守の問題ではなく、他の要因によるものである可能性が示唆されています。
今回の研究結果から、より効果的なSLIT治療法を開発するためには、遵守以外の要因に焦点を当てることが重要であると考えられます。例えば、個々の患者の症状の重さや治療への反応性によって治療法をカスタマイズすることが、より効果的な治療法の開発につながるかもしれません。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/21 09:53:24時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/11/21 13:16:41時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。
(2024/11/21 13:16:42時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています