スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。
この理由の1つとして、保護者とのコミュニケーションに悪影響する可能性があります。
今回は、その点を見た論文をご紹介します。
- オランダで行なわれた研究
- テレビの視聴時間が、実行機能に与える影響を検証した
- テレビの視聴時間が長さと実行機能の低下には関連性がある
- この関連性は、育児のスタイル、家庭環境、視聴したコンテンツに修飾される
スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。
オーストラリアも似たような方針を出しています。
研究の概要
背景・目的:
この研究は、育児のスタイル、メディアへの曝露および蓄積リスクが、幼児期の実行機能 (EF) とどのように関連するかを検討した。
方法:
アメリカにおいて、全国的に代表的なグループにいる2~8歳の子供を持つ保護者(N=1156)が電話調査に参加した。
親は、子供がテレビ、音楽、本を読んでいる様子を24時間の日誌で報告するよう求められた。
親はまた、子供の実行機能(EF)に関する質問と同様に、多くの人口統計学的および育児変数を報告した。
結果:
累積リスクによりグループ化された小児において、就学前(2~5歳)と学童期(6~8歳)の子供に対し、別々の多変量回帰分析を行った。
ハイリスクの就学前の児童において、保護者の育児スタイルは、テレビへの曝露が実行機能に与えるリスクを緩和した。
さらに、教育的なテレビへの暴露は、ハイリスクの学齢期の小児において、悪影響の緩衝的な役割を担った。
累積リスク、年齢、子育ての質は、多くの暴露因子の効果と相互作用した。
結論:
本研究は、幼児期の累積リスク、育児、および実行機能との間の複雑な関連パターンを示した。
この研究結果は、アメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics)の推奨と一致しており、子供が部屋にいるときはテレビをオフにすべきであるという勧告を支持する。
また、複数のメディアで教育的な高品質のコンテンツに触れることが、小児にとって有益である可能性も示唆している。
考察と感想
自宅にいると「なんとなく」テレビをつけてしまっていることがありますよね。私の家庭でも、幼少期はそうだった記憶があります。
こういったテレビをだらだらとつけておくのはやめたほうがよさそうなデータでした。もちろん、育児のスタイルであったり、家庭の背景(貧困など)、みせるコンテンツなどにもよるのでしょうが、基本方針としては、2〜5歳の小児ではテレビ視聴は1時間までが基本のようです。
まとめ
今回の研究は、アメリカで行なわれた研究で、テレビの視聴が実行機能に与える影響と、この影響が育児のスタイルやコンテンツによって修飾されるかをみています。
育児スタイルや視聴したコンテンツによって、テレビの長時間の視聴が実行機能に与える影響は修飾されていますが、基本路線としては、長時間の視聴は避けた方がよさそうです。
Dr. KIDが執筆した医学書:
小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/11/21 01:00:58時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています
当ブログの注意点について