スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。
この理由の1つとして、小児の肥満予防があります。
テレビの視聴時間が増えると、それだけ運動時間が減る可能性があります。また、テレビを見ながら、ついつい完食してしまうこともあります。
今回の研究では、こういった点を検討しています。
- スクリーンタイムと就学前の幼児のBMIの関連性を調査
- 平日のスクリーンタイムが長いほど、BMIが上昇する傾向があり
- 大半は、運動時間の減少と視聴中の完食を介してBMIが上昇していそう
Television Viewing, Television Content, Food Intake, Physical Activity and Body Mass Index: A Cross-Sectional Study of Preschool Children Aged 2-6 Years
スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。
オーストラリアも似たような方針を出しています。
研究の概要
背景:
就学前の児童において、テレビ (TV) 視聴と体重との関連性の根底にあるメカニズムは、まだ十分に理解されていない。
本研究は、
- 就学前児童のテレビ視聴習慣
(視聴に費やした時間、視聴したコンテンツ、および視聴中に食べた食物) - 毎日の食物摂取
- 一般的な身体活動レベル
- ボディ・マス・インデックス (BMI)
との関係を調査することを目的とした。
方法:
メルボルンの就学前児童を対象に(n=135)、横断研究が行われました。
未就学児の母親は3日間のテレビ日誌をつけ;
- テレビを見ている時間、内容、食べたもの
- 子どもの身長、体重、運動量
などを報告した。
変数間の関連性は、二変量での相関および階層回帰分析により決定した。
結果:
就学前の平均年齢は4.5歳で、 14%は過体重または肥満であった。
テレビを見るのに費やした時間は、1日あたり平均90.7分(SD 50.7)であった。
正の相関が、平日のテレビ視聴とBMIのz-scoreに認めた 。
この効果は、テレビを見ている間に摂取した総エネルギー、座位の時間(3日間)で調整しても、中等度の相関を認めた。
結論:
TV視聴が、視聴中の身体活動低下や食事摂取を介し、就学前の子供の肥満・過体重に影響するのかもしれない。
考察と感想
Abstractにはあまり詳細は記載されていませんでしたが、この研究結果の面白いところは媒介分析(mediation analyses)を行なっているところです。
例えば、テレビの視聴時間がBMIに与える影響をみるとして、
- テレビをみる→お菓子を食べる→肥満
- テレビをみる→運動しない→肥満
など、様々な経路を介して生じているのが分かります。この2つの経路で、total effectの75%のばらつきが説明可能だったようです。
最初の経路であれば、テレビのお菓子を食べるのをやめることで、ひょっとしたら肥満予防になります。
子供だと難しですが、大人ならテレビを見ながら運動(ジムでのウオーキングなど)も考えつきます。
このように、因果の経路を媒介する因子を探ることで、介入可能な手段が増えることがあります。
まとめ
未就学児を対象に、テレビの視聴時間とBMIの関連性を調査した研究でした。
テレビの視聴時間が長いほど、BMIが上昇する傾向にあったようです。
テレビ視聴によって、運動時間が減り、テレビを見ながら間食してしまうことがメインの要因と考えられたようです。
乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓
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