科学的根拠のある子育て・育児

夜間のスクリーンタイムや暴力的なコンテンツは、幼児の睡眠に影響する?[アメリカ編]

スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。

この理由の1つとして、小児の睡眠不足があります。

テレビの光への暴露は、睡眠の開始、持続時間、質に悪影響を及ぼす可能性があるといわれています。

また、日中に暴力的なコンテンツ動画を見ても、興奮して夜間の睡眠に影響する可能性もあります。

今回は、この点を3〜5歳時点でみた研究です。

ポイント

  • 3〜5歳において、スクリーンタイムやコンテンツが夜間の睡眠に与える影響を見た研究
  • 夜にスクリーンタイムを設けたり、日中でも暴力的なコンテンツの場合、夜間の睡眠の質に悪影響
  • 日中に暴力的でないコンテンツであれば、ほとんど睡眠の質に影響はなさそう
マミー
マミー
スクリーンタイムってどうなのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の文献をみてみましょう。

スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。

オーストラリアも似たような方針を出しています。

 研究の概要

背景・目的:

特に夜でのスクリーン使用は、子供の睡眠にネガティブな影響があることが示されている。

しかし、コンテンツの選択と成人の共同使用がこの関係にどのように影響するかについてはほとんど知られていない。

子供の睡眠に対するメディアのコンテンツ、タイミングおよび使用行動の影響を調査した。

方法:

3〜5歳の子供を対象に、過去に行われたRCTのデータをベースに研究が行われた。

睡眠測定は子供の睡眠習慣アンケートから得た。

メディア使用に関する日記には、

  • 時間
  • コンテンツのタイトル
  • テレビ、ビデオゲーム、コンピュータの使用状況

が記録されています。

コンテンツのタイトルから、レーティング、暴力、恐怖、ペースを分類しました。

メディア使用のタイミング、内容、および併用が睡眠のスコアに与える影響を調べるために、nested linear regressionを使用した。

Dr.KID
Dr.KID
睡眠の問題はsleep problem scoreという指標を使ったようですね。

睡眠の質は、

  •  入眠までの時間
  •  夜間覚醒
  •  悪夢
  •  覚醒不良
  •  日中のだるさ

を、いつも(5〜7/週)、時に(2〜4/週)、稀に(0〜1/週)で評価しているようです。

合計は5〜15点で、点数が高いほど結果が悪かったようです。

結果:

平均して、子供は毎日72.9分のスクリーン時間を消費していた。
このうち、 14.1分は7:00 PM以降に発生した。

18%の親が1回以上の睡眠障害を報告している。

寝室にテレビを設置している子どもは、より多くのスクリーンタイムを消費し、睡眠障害を抱えている可能性が高かった。

回帰分析モデルの結果によると、夜間メディア使用の時間の増加は、睡眠問題スコアの増加と関連し(0.743 [95%信頼区間:0.373~1.114])、暴力的内容の日中使用も同様に睡眠問題スコアが上昇した(0.398 [95%信頼区間:0.121~0.676])。

この傾向は、寝室にテレビを設置している家庭や低所得世帯で大きかった。

結論:

暴力的な内容と夜間メディア使用は睡眠問題の増加と関連していた。

しかし、非暴力的コンテンツを昼間に使用する場合は、睡眠に関する問題が観察されなかった。

考察と感想

最後の統計モデルの回帰分析の係数(β)を見ると、以下の通りでした:

  •  夜間のメディア使用:0.743 [0.373〜1.114]
  •  片親の世帯:0.611 [0.174〜1.048]
  •  日中に暴力的なコンテンツを視聴:0.398 [0.121〜0.676]
  •  低所得世帯:0.338 [0.054〜0.622]
  •  日中の暴力的でないメディアの使用:0.022 [-0.186〜0.229]

このデータを見ると、夜間のスクリーンタイムや日中での暴力的なコンテンツの視聴は睡眠の質に大きく影響しそうなので避けたいところです。

一方で、日中において暴力的でないメディアの使用であれば、あまり影響しなさそうですね。

Dr.KID
Dr.KID
夜間と暴力的な内容を避けるのは、3〜5歳の小児の睡眠には重要ですね。

まとめ

3〜5歳において、スクリーンタイムやコンテンツが夜間の睡眠に与える影響を見た研究です。

夜にスクリーンタイムを設けたり、日中でも暴力的なコンテンツの場合、夜間の睡眠の質に悪影響するデータが示されています。

一方で、日中に暴力的でないコンテンツであれば、ほとんど睡眠の質に影響はなさそうです。みせる内容に配慮する必要があるでしょう。

乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓

スクリーンタイムのまとめnote

乳幼児のスクリーンタイムの考え方

睡眠といえば、河合真先生↓↓

created by Rinker
¥5,280
(2024/11/21 09:41:42時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの書籍(医学書)

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

 

新刊(医学書):小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/11/21 01:10:36時点 Amazon調べ-詳細)

 

Noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。