スクリーンタイム(テレビなどの画面の視聴時間)について、18〜24ヶ月未満の乳幼児は、基本的に設けないことが推奨されています。なた、2〜5歳に関しては、1時間未満が良いとされています。
この理由の1つとして、感情面であったり、家庭の機能に悪影響する可能性があります。
今回は、その点を見た論文をご紹介します。
- 欧州で行なわれたコホート
- テレビ・電子機器と小児の幸福度などを検討
- 使用時間が長いと、感情的な問題や家庭機能不良のリスクは高まる傾向
Early Childhood Electronic Media Use as a Predictor of Poorer Well-beingA Prospective Cohort Study
スクリーンタイムは、米国小児科学会は2016年の改訂で、2歳未満は0時間(みせないこと)、2〜5歳は1時間までを推奨しています。テレビなどを観る際も、保護者と一緒にみることを推奨しています。
オーストラリアも似たような方針を出しています。
研究の概要
背景・目的:
就学前の小児において、電子メディアの利用とその後の幸福度との関連を明らかにすることは、長期的に良好な結果を得るために不可欠である。
このため、幼児の電子メディア使用とその後の健康状態の用量反応関係の可能性を検討する
方法:
IDEFICS研究は、介入要素のある前向きコホート研究である。
IDEFICS研究に参加しているヨーロッパの8カ国において、2007年9月1日〜2008年6月30日までのベースライン時、および2009年9月1日〜2010年5月31日までの追跡時にデータを収集した。
この調査は、IDEFICS研究の縦断的構成にのみ参加し、介入には参加しなかった2~6歳の小児3604人に基づいている。
有効性が確認された2つの尺度から得られた以下の6つの幸福度指標を追跡時の転帰として用いた:
*KINDLR (改訂版)からの
- Peer problems: 同僚との問題
- Emotional problems:感情面の問題
- Emotional well-being:心の健康
- Self-esteem:自尊心
- Family functioning:家族の機能
- Social networks subscale:ソーシャルネットワーク
転帰不良のリスクがある小児を同定するために、各尺度を二分した。
ベースラインデータの電子媒体使用の指標(平日・週末のテレビ・電子ゲーム (eゲーム) /コンピュータ利用)を予測因子として使用した。
結果:
関連性は少年と少女の間で異なっていた。
しかし、電子メディアの使用レベルの増加は、幸福度低下の結果を予測することを示唆した。
平日または週末のテレビ視聴は、電子ゲーム/コンピュータ使用よりも一貫して不良転帰と関連していた。
小児における有害転帰の可能性に関しては、テレビ視聴または電子ゲーム/コンピュータ使用が1時間多くなると、感情的問題や家族機能不良のリスクは1.2~2.0倍増加していた。
結論:
幼児期の電子メディアの使用レベルが高いほど、子供は幸福度を示すいくつかの指標が悪化するリスクは高かった。
これらのメカニズムを同定するため、更なる研究が必要である。
考察と感想
IDEFICSは初めて聞いたコホートですが、欧州8カ国で行なわれた、わりと大規模な小児のコホートですね。
論文中のTable 3が結果の要約としてはよさそうで、
女児は、
- 同僚との問題:平日のPC + ゲーム
- 感情的な問題:平日のPC + ゲーム
あたりが大きく影響していそうな印象でした。
一方で、男児は大きくORをあげるものはなかったですが、PCより平日のテレビが家庭の機能に悪影響しているようです。
この論文では[dose-response relationship]を検証といっていたのですが、統計モデルはlinearityを仮定している点がやや残念でした。spline modelとかを使用して、データを見せるなど工夫があってもよかったと思っています。
まとめ
今回の研究は、欧州8カ国で行なわれたコホート研究で、テレビや電子機器が小児に与える影響をみています。
テレビや電子機器の過剰な使用は、小児の感情的な問題や家庭の機能に悪影響する可能性が示唆されていました。
乳幼児のスクリーンタイムの考え方をまとめたnoteはこちらになります↓↓
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