新型コロナウイルスに関して、アメリカでは小児の感染者数は、全体の8-9%ほどと推定されているようです。
人口のうち小児が占める割合は22%ほどなので、成人・小児が等しく感染するウイルスであれば、同じくらいの感染者の割合になるはずですが、どうやら異なるようです。
小児は感染しにくいといった意見もあります。未感染者ばかりの家庭において、家庭内に感染が持ち込まれた場合の症例を集めて、成人と小児の二次感染率を比較・検討された研究が公表されたようです。
- アメリカのユタ州とウィスコンシン州で行われた研究
- 感染を持ち込む例は成人が多い
- 家庭内での二次感染は小児で28%、成人で30%
- 小児の症状は軽症のことが多かった
2021年1月に公表されたようです。
新型コロナウイルスの家庭内での二次感染は、成人と小児で異なる?
研究の背景/目的
小児における新型コロナウイルスに関するデータは限られている。
今回は、このウイルスにおいて、小児の家庭内での接触者の感染率と症状の特徴について述べた。
研究の方法
新型コロナウイルスに感染した小児と家族内接触者を登録し, 14日間の毎日の症状を前向きに評価した。
さらに、新型コロナウイルスのPCRと血清学的検査のための検体を得た。
小児との接触者の間で伝播について記述し,感染の危険因子を評価し,症状の陽性および陰性予測値を計算した。
Generalized estimation equationを用いて、小児と成人接触者間の二次感染率と症状を比較した。
研究の結果
58世帯のうち, 188人の接触者を登録した(成人120名;小児 68名)。
成人 (30%) と小児 (28%) の二次感染率は同程度であった。
小児から感染する可能性のある世帯では、小児から成人への感染は10人中2人 (20%) 、小児から小児への感染は6人中1人 (17%) であった。
小児の症例では、頭痛 (79%) 、咽頭痛 (68%) 、鼻漏 (68%) が最も多く報告された;発熱の測定値(100%;95%信頼区間:44%~100%)を除き、症状の陽性適中率は低かった。
症状のある成人と比較して,小児は咳(オッズ比 [OR] :0.15;95%信頼区間:0.04~0.57), 味覚消失(OR:0.21;95%信頼区間:0.06~0.74),および嗅覚消失(OR:0.29;95%信頼区間:0.09~0.96)を報告する可能性が低く, 咽頭痛(OR:3.4;95%信頼区間:1.04~11.18)を報告する可能性が高かった。
結論
小児と成人の二次感染率はほぼ同じであった。
しかし、一般的に小児の症状は重度でないことが多かった。
考察と感想
ユタ州とウィスコンシン州の58の家庭を対象に行われた研究でした。
この58の小児と成人のいる世帯があり、57は成人が家庭内に感染を持ち込んでいたようです。
ほとんどのケースは成人が家庭内に感染を持ち込んでいますが、家庭内での二次感染は、成人では30%、小児では28%が感染していたようです。
小児は、無症状なケースもあり、検査して初めて見つかる場合もそれなりに多かったようです。
アメリカの人口で小児が占める割合は22%であるが、新型コロナウイルス感染者の分布では小児は8.3%ほどしかいないようです。この原因の1つとして、「detection bias」が考えられると述べたいのかなと思いました。小児の場合は軽症・無症状の場合も多く、知らないうちに感染していたというシナリオで、この分布の違いの一部は説明できるのかもしれないです。
まとめ
アメリカのユタ州とウィスコンシン州で行われた研究でした。
成人と小児のがいる世帯において、誰かが感染を持ち込んだ場合、家庭内での二次感染のリスクなどを推定しています。
感染を持ち込む例は成人が多く(57/58)、家庭内での二次感染は小児で28%、成人で30%生じていたようです。
小児の症状は軽症のことが多かったようです。
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