今回は鼻副鼻腔炎の合併症(眼窩周囲 or 眼窩蜂窩織炎・膿瘍、海綿静脈洞血栓症、脳膿瘍など)がどの程度生じるかをみた研究です。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 急性副鼻腔炎の合併症の起こる割合の調査
- 入院患者においては、4%弱
- 大多数の外来患者を無視した解析である点が残念
重篤な合併症は基本的に稀のようです。
研究の概要
概要
副鼻腔炎の頭蓋内合併症は、外科的な処置が必要となる例がある。
今回は、13年間(1975年〜1988年の13年間)に急性または慢性の副鼻腔炎でミネソタ大学病院およびミシガン大学医療センターに入院した全患者(n = 649)のカルテを後方視的に検討し、合併症の発生率を明らかにした。
臨床症状、細菌学、関与した副鼻腔、影響を及ぼす因子、発症時の白血球数、入院期間、介入後の合併症について報告した。
副鼻腔炎による頭蓋内合併症を起こしたのは24例で、その発生率は入院患者においては3.7%であった。
過剰な罹患率や死亡率を防ぐためには、積極的な内科的介入と準緊急的な手術が必要である。
頭蓋内合併症としては、硬膜下膿瘍、前頭葉膿瘍、半球内膿瘍、空洞および上矢状静脈洞血栓症、骨髄炎などがあげられた。
感想と考察
分母が「入院患者」になっている点が肝ですね。実際に、ほとんどの副鼻腔炎は入院は不要ですので、対象になったのは、非常にごく一部の患者と思います。となると、この合併症率の解釈は重要で、一般人口からすると、もっとずっと低い値だと思いました。
まとめ
急性副鼻腔炎の合併症について、入院患者における合併症率を検討しています。入院例においては、3.7%とありますが、実際、どんな人が入院したのか、あまりイメージが湧きづらかったです。
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