今回は鼻副鼻腔炎の合併症(眼窩周囲 or 眼窩蜂窩織炎・膿瘍、海綿静脈洞血栓症、脳膿瘍など)が生じるタイミングをみた研究です。
先にこの研究の結論とポイントから述べましょう。
- 急性副鼻腔炎の合併症の起こるタイミングの調査
- 眼の周囲の合併症の多くは7日以内に生じている
- それ以外は比較的遅い時期に起こる
この早期に起こる合併症の予防は難しいかもしれないですね。
研究の概要
背景
急性副鼻腔炎を合併した小児の人口統計学的、微生物学的、アウトカムデータを検討するために研究が行なわれています。
方法
1995年1月〜2002年7月に、急性副鼻腔炎の合併症で入院した小児の後方視的レビューを行っています。
結果
それぞれの合併症ですが、
- 眼窩蜂巣炎(51)
- 眼窩膿瘍(44)
- 硬膜外膿瘍(7)
- 硬膜下膿瘍(6)
- 脳内膿瘍(2)
- 髄膜炎(2)
- 海綿静脈洞血栓症(1)
- Pott’s puffy tumors(3)
でした。()内は人数です。
66%が男性で、64.4%が11月~3月に発症しています。
頭蓋内合併症の患者と比較して、片側性眼窩合併症の患者は
- 低年齢(平均6.5歳 vs. 12.3歳)
- 入院期間が短い(平均4.2日 vs. 16.6日)
- 症状の持続期間が短かった(平均5.4日 vs. 14.3日)
合併症による症状の消失した割合は、
- 眼球運動制限を認めた患者:54/55人
- 視力低下を認めた患者:7/8人
- 非反応性瞳孔を認めた患者:3/3人
- 神経学的障害を認めた患者:7/7人
- けいれん発作を認めた患者:2/4人
において、完全に消失したことが報告されています。
最も多く分離された菌はStreptococcus milleriでした(外科用培養で11/36例)。
死亡例はなく、持続的な罹患率は4例(3.8%)であった。
結論
最初の視力は著しい低下があったものの、永続的に続く例は少なかったようです
また、Streptococcus milleriは小児の副鼻腔炎の合併症によく見られる病原体です。
感想と考察
眼窩周囲の感染症が生じた場合は、副鼻腔炎の適応の有無とは関係なく、抗生剤の投与が必要でしょう。意外と早く起こるというのは、この論文でも一貫していますね。
まとめ
副鼻腔炎における抗菌薬は症状の軽快には有効とする研究は複数あります。
しかし、眼窩周囲蜂窩織炎など重篤な合併症の一部は非常に早い段階で始まるため、抗菌薬での予防が困難なことがあるようですね。
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