- 下痢の時、乳糖が入っていないミルクにすべきですか?
という質問もあります。
胃腸炎で腸が荒れてしまうと、乳糖分解酵素が思うように腸内で産生されなくなることがあります。この場合、乳糖を含む通常のミルク(人工乳)を与えると、乳糖が分解されず、長引く下痢の原因となることがあります。
実際に、乳幼児が下痢の時に乳糖を含まないミルク(大豆でできたもの)を与えると、下痢の期間が改善するかどうかみた研究があります。
- 下痢の時に、通常のミルク vs. 大豆ミルクどちらが良いか?
- 大豆製品に変えると、下痢の期間はやや短縮する傾向
この研究だけでなく、他の研究結果も見てから最終的に判断しましょう。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、通常の人工乳にすべきか、大豆からできたミルクにすべきかを検討しています。
1990年1月10日〜1991年1月30日までに行われたランダム化比較試験(RCT)になります。
対象患者
対象となったのは、
- 2〜12ヶ月
- 1週間未満の下痢
- 軽度〜中等度の脱水
が対象です。
治療
治療は、脱水の補正を行なった後に
をランダムにわりつけています。
研究結果
結果は以下の通りでした
1. 下痢の期間について
下痢の期間は、
- 大豆ミルク:4.5日(SD, 3.6)
- 調整乳ミルク:6.6日(SD, 4.2)
となりました。大豆を使用したミルクの方が短かったですね。
2. 体重について
- 大豆ミルク:+0.27 kg(SD, 0.45)
- 調整乳ミルク:+0.34 kg(SD, 0.33)
体重増加に関しては、ほとんど変わりなさそうです。
3. 入院期間について
- 大豆ミルク:1.6日(範囲, 0.98)
- 調整乳ミルク:2.7日(範囲, 1.4)
でした(中央値)。おそらく下痢の期間が短かったぶん、入院期間も短く済んだのでしょう。
感想と考察
今回の研究に関しては、乳糖が入っていない豆乳からできたミルクの方が、下痢の期間はやや短くなりそうな印象ですね。
乳幼児の場合、大豆からできたミルク、例えばボンラクトなど、を開始する場合、アレルギーに関しても配慮が必要になります。大豆製品を口にしたことがない小児は、慎重に開始する必要もあります。
乳糖を含まないミルクは他にもあります:
まとめ
今回は、乳児の下痢に対して、乳由来のミルク vs. 大豆由来のミルク、で下痢の期間を比較しています。
大豆由来にミルクの方が、下痢の期間は1−2日ほど短かったようです。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
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