- 下痢の時、乳糖を避けましょう
という指示もあるようです。
急性胃腸炎のときは、小腸の乳糖分解酵素が欠乏しやすく、さらに炭水化物やタンパク質、脂質の吸収が悪くなることが知られています。このため、乳糖を避けた方がよいのではないか、と必要性を感じる保護者や医療者がいるようです。
今回は、この方針にメリットがどのくらいあるのかを触れた論文の解説をしようと思います。
先に結論とポイントから述べましょう。
- 乳児が下痢の時、乳糖を避ける必要があるか検討
- 乳糖をさけたほうが、下痢の遷延リスクは低くなるかもしれない
- ただし、この研究はサンプル数が少なすぎる
Leake RD, Soy-based formula in the treatment of infantile diarrhea. Am J Dis Child. 1974 Mar;127(3):374-6
基本的に、胃腸炎のとき、乳糖を避けるべきかは、専門家でも意見が別れているようです。
研究の概要
今回は、小児の下痢において、ミルクや乳製品をそのまま続けてよいか検討した研究になります。
1974年に報告されたランダム化比較試験になります。
対象患者
対象となったのは、
- 胃腸炎で入院
- 生後1週〜8ヶ月
の小児が対象です。
治療
治療は、点滴による脱水補正をした後に、以下のような方針にしています。
- 通常のミルク
- 乳糖を含まない大豆由来のミルク
のいずれかをランダムに割り当てています。
乳糖を含まない大豆由来にミルクとして、国内では「ボンラクト」などがあります:
研究結果
最終的に22人が参加しています。
結果は以下の通りでした:
乳糖 | なし | あり |
成功 | 10 | 4 |
失敗 | 1 | 7 |
治療の成功率は、乳糖なしの方が、リスク比にして2.5倍、リスク差にして55%高い結果でした。
失敗の定義は、1日6回以上の下痢が3日以上続く、としていたようです。
感想と考察
今回の研究に関しては、小児が下痢をしたときに、乳糖を避けた方が治療失敗リスクは低いというデータでした。
ただ、たった11例のRCTであり、再検証は必要でしょう。
まとめ
今回は、乳児の下痢に対して、乳糖を避けるべきかを検討しています。
乳糖を避けて、大豆由来のミルクを使用することで、治療の失敗率は低下していますが、サンプル数が少なく、アウトカムも曖昧なため、追加検証は必要でしょう。
類似の研究は多数出ているので、今後も報告していければと思います。
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