今回は1991年にBMJで発表された論文をピックアップしました。
- 「お熱が上がった場合にどうしたら良いですか?」
と外来で保護者の方々から質問されることがよくあります。
答え方は小児科医によっても様々ですし、同じ質問でも患者さんを取り巻く環境によって答え方が少し変わることもあります。
発熱1つを例にしても、患者さんからの素朴な質問に科学的根拠を持って答えるのは難しいケースもあります。
ですが、今回は発熱時の対処法について研究した論文を発見しましたので、こちらでご紹介させていただければと思います。
- 発熱時の対処法の科学的根拠を知る
研究の方法
今回の研究はイギリスのサウザンプトンで行われたランダム化比較試験(RCT)です。
- 生後3ヶ月〜5歳
- 37.8〜40℃の発熱
- 熱性けいれんの既往がない
- 4時間以内に解熱剤を使用していない
などを主な対象患者としています。
発熱に対する治療について
治療についてですが、
- 薄着に変更し、冷たいものを飲ませる
- 暖かい部屋で、ぬるま湯に浸したスポンジで体を20分拭き、その後に薄着にする
- アセトアミノフェンを使用し、薄着にする
- 上記のアドバイスを全て行う
の4通りです。
アウトカムについて
研究のアウトカムは、
- 体温の推移
- 治療の容認性(Likert Scaleで1−4点)
となっています。
研究の結果と考察
合計で52人の患者が研究に参加しました。
男女比以外は比較的均一な集団となっています。
体温の推移
体温の推移の表はこちらになります。治療開始から4時間ほど推移を見ています。結果を簡単に要約しますと、
- 薄着にしても、あまり体温は変わらなそう
- ぬるま湯で体を拭くと、最初の1時間ほどは体温が下がる
- 解熱薬を使用すると、90分ほどかけて徐々に熱が下がる
- 全て行うと、解熱薬より少し体温が低くなるかも
という結果でした。
治療への容認性について
容認性の指標ですが、保護者の主観で
- Very happy
- Happy
- Not sure
- Unhappy
- Very unhappy
の5段階に分けています。中央値を比較すると、以下のようになりました。
治療 | 中央値 |
薄着 | 3 |
スポンジ | 3 |
解熱薬 | 1 |
全て | 2 |
患者側からすると、解熱薬が最も容認される治療法でした。
一方、ぬるま湯に浸したスポンジの治療は、抵抗する子供もいたようで、評価は低めになっています。
感想と考察
実臨床に即した研究で、非常に示唆に富む論文でした。
「厚着は体温が上がるので、避けましょうね」と聞いたことがありますが、この研究はそれを明らかに支持するものではありませんでした。
ただし、薄着にするか否かは相対的な問題で、この研究に参加した方がもともと厚着でなくて解熱効果を確認できなかった、という可能性は残っていると思います。
また、病院に受診する際に外気にさらされて、多少なりとも体温が変動した可能性もあり得ます。
ぬるま湯で体を拭く方法と解熱剤については、他の研究と一貫した結果です。
ぬるま湯で体を拭くと多少体温は下がる傾向にありますが、解熱剤ほどではありません。また、一部のお子さんは嫌がるため、無理強いしてまで行わなくても良いのではと感じてしまいました。
また、効果は一時的なのも知っておくと良いでしょう。
解熱薬は予想通りの結果でして、使用後60-90分ほどで解熱効果が出てきて、その後数時間は持続していそうです。
解熱剤使用後の熱型の推移を知っておけば、外来で保護者の方々へ説明する際にやくに立ちそうです。
まとめ
今回の研究から、発熱した3ヶ月〜5歳の小児において、
- 薄着にしても体温はあまり変わらなさそう
- ぬるま湯で体を拭くと、一時的に体温が下がる
- 解熱剤は使用後60-90分ほどかけてゆっくりと効果がある
- 解熱薬が最も容認性の高い治療法であった
と言えそうです。