熱が高くて辛そうな時、どうやって解熱させるかですが、
- 解熱薬を使用する
- ゆるま湯に浸したスポンジ・タオルで体を拭く
などが昔から行われてきた方法です。
小児で使用される解熱薬はアセトアミノフェン(カロナール®︎やコカール®︎)がほとんどでしょうが、時にNSAIDsが使用されることがあります。
基本的にはアセトアミノフェンよりNSAIDsの方が解熱や鎮痛効果は高いと考えられていますが、小児でNSAIDsの使用する機会は少ないです。
これにも理由がありまして、例えば、アセチルサリチル酸(ASA)もNSAIDsの一種ですが、インフルエンザや水痘で使用をするとライ症候群を起こしてしまうことがるからです。
今回の研究では、解熱薬 vs. ぬるま湯にスポンジ、のどちらが解熱効果が高いかを研究しています。
研究の方法
今回の研究は生後6ヶ月〜5歳の小児を対象として、
- 39℃以上の発熱がある
- 他の薬剤を内服していない
- 慢性疾患がない
- 脱水なし
を対象にトルコで行われました。対象者はランダムに治療を割り当てられ、
- ぬるま湯に浸したスポンジで体を拭く・擦る
- アセトアミノフェン
- イブプロフェン
- アセチルサリチル酸(ASA; アスピリン)
のいずれかを使用しています。
治療開始から30分毎に体温を計測し、どの程度解熱したかを確認しています。
研究結果と考察
合計で201人の患者が研究に参加しました。
こちらが参加者の背景情報になります。
グループ間で年齢、性別、体温、診断などで大きな違いはなさそうです。
体温の推移の記録について
こちらの図が治療群それぞれの体温の推移になります。
どの治療グループでも最初の30分間に体温が少し低下しており、スポンジ群の効果が最も高そうでした。
しかし、30分を過ぎると解熱薬を使用して3つのグループの方が解熱効果が徐々に大きくなりました。
一方で、スポンジ群の体温の推移は横ばいでした。
小児科外来でよく使用されるアセトアミノフェンですが、3時間で熱の推移を見ると、こちらはNSAIDsより少しだけ弱いけれども、スポンジよりは解熱効果がありそうという結果でした。
また、アスピリンとイブプロフェンはほぼ同等の解熱効果でした。
考察と感想
前回、こちらの記事でも類似の研究を紹介しました。
ぬるま湯や冷水にスポンジを浸して体を拭く方法は、解熱薬に近いくらいの効果がありましたが、今回の研究では最初の30分だけでした。
ひょっとしたらこの研究の仕方が異なり(つまり、体を拭く時間や強度が異なる)、今回の結果になっているのかも知れません。
いくら体温を下げる為とはいえ、長時間、体を拭き続けるのは保護者も本人も辛いでしょうから、現実的ではないのかもしれません。
また、アセチルサリチル酸(アスピリン)はライ症候群との関連性が示唆されており、イギリス、日本、アメリカなどでは発熱時の小児への使用に慎重な姿勢を見せています。
一方で、この研究がされたトルコでは小児へ使用されていることが多々あるらしく、著者らは批判的な姿勢を示しています。
安全性を考えれば、アセチルサリチル酸(アスピリン)よりアセトアミノフェンは小児科的には自然でしょう。
まとめ
今回の研究では、ぬるま湯に浸したスポンジ、解熱薬はいずれも使用後30分は解熱効果がありました。
しかし、スポンジを使用した治療はその後の解熱効果はありませんでした。
3時間ほど熱の推移を確認したところ、スポンジ < アセトアミノフェン < イブプロフェン = アスピリンの序列で解熱効果は大きかったです。
小児の発熱に対して…
- ぬるま湯+スポンジの効果は一時的…
- 解熱薬は使用後3時間で徐々に解熱効果を発揮
- アセトアミノフェンはNSAIDsより解熱効果はやや小さい
Dr.KID