今回は、小児のIgA血管炎においてステロイドが有効か検討した論文をご紹介しようと思います。
- カナダからの報告
- ステロイドが腹部症状や腎炎に有効かを検証
- 1年という長期で見ると、ほとんど効果はないかもしれないが、サンプル数は明らかに少ない
2004年にカナダから公表されたようです。
小児のIgA血管炎にステロイドは有効?[カナダ編]
研究の背景/目的
ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP: IgA血管炎)は,小児期に最もよくみられる全身性血管炎である。HSPの子どもたちにコステロイドを投与すべきかどうかについては,かなりの議論がある。
本研究の目的は、早期のステロイド投与により、HSPの小児における腎合併症や消化器合併症の発生率を低減できるかどうかを検討することである。
研究の方法
3次医療機関の小児科・救急外来を受診したHSP患者40名を対象に、無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。
治療群(n=21)にはプレドニゾン2mg/kg/日を1週間経口投与し、2週間目に漸減し、プラセボ群(n=19)には同じ内容のプラセボを投与した。
主要評価項目は、1年後の腎障害の発生率と、急性胃腸合併症の発生率でした。
主要評価項目は、フィッシャーの正確検定を用いて分析した。
研究の結果
1年後の腎障害発生率には差がなかった(プレドニゾン群3/21例、プラセボ群2/19例、P = 1.0)。
また、急性胃腸合併症の発生率にも統計学的に有意な差はなかった(プレドニゾン群2/21名、プラセボ群3/19名、P=0.7)。
プラセボ群では2名の小児が腸重積を経験したが、プレドニゾン群では皆無であった(P = 0.2)。
結論
HSPにおける早期のプレドニゾン療法は、1年後の腎障害のリスクや急性消化器合併症のリスクを減少させないようである。
腸重積のリスクは減少する可能性がある。合併症のないHSPにプレドニゾンを日常的に早期に使用することは、現時点では推奨できない。
考察と感想
サンプル数が明らかに少ない研究ですね。
あと、問題点としては胃腸症状は長期的な展望すぎる気もします。使用するときはまさに腹痛がひどい状況だと思うので、腹痛の期間や短期的な改善率をハードアウトカムに持ってきた方がよかったのではないでしょうか。
まとめ
今回は、ステロイドの早期治療が小児のIgA血管炎に有効かを検証したRCTでした。
早期に投与しても、長期的には腎炎や腹痛にはメリットははっきりしないですが、追試は必須でしょう。
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