今回は、小児のIgA血管炎においてステロイドが有効か検討した論文をご紹介しようと思います。
- システマティックレビューとメタ解析
- 腹痛などいくつかのアウトカムでは有益かもしれない
- 研究数は少なく、基本的には不十分な結果で追加の研究が欲しい
2007年に公表されたようです。
小児のIgA血管炎にステロイドは有効?[システマティックレビュー編]
研究の背景/目的
副腎皮質ホルモンの投与がヘノッホ・シェーンライン紫斑病の急性症状を改善するかどうか、あるいは腎障害を軽減するかどうかについては、一般小児科医や小児リウマチ専門医の間でコンセンサスは得られていない。
そこで,我々は,副腎皮質ステロイドの使用に関して報告されている介入および観察研究のデータを統合することを試みた。
研究の方法
Medlineデータベース(1956年~2007年1月)およびCochrane Controlled Trials Registerに登録されている文献を総合的に検討し、メタ分析を行った。
診断時にコルチコステロイドを投与されたヘノッホ・シェーンライン紫斑病患者と支持療法のみを受けた患者との間で報告された転帰を基に,腹痛の消失,激しい痛みや腸重積に起因する外科的介入の必要性,ヘノッホ・シェーンライン紫斑病の再発の可能性,一過性または持続性の腎疾患の発症に関するオッズ比を算出した。
研究の結果
最初の文献検索で検索された201件の論文のうち、15件が対象となった。コルチコステロイド治療は,腹痛が消失するまでの時間の中央値を短縮しなかったが,平均消失時間を有意に短縮し,24時間以内に消失する確率を高めた。
早期のコルチコステロイド治療は、持続的な腎疾患を発症するオッズを有意に減少させた。さらに、統計的には有意ではなかったが、プロスペクティブデータによると、外科的介入と再発の両方のオッズが減少したことが示唆された。
結論
コルチコステロイドを疾患の早期に投与することで、臨床的に重要ないくつかのヘノッホ・シェーンライン紫斑病の転帰に対して一貫した効果が得られるようである。
考察と感想
以下の点を明らかにするために行われたSystematic reviewのようですね:
- コルチコステロイドはHSPの腹部症状の期間を短縮するか?
- コルチコステロイドはHSPに対する外科的介入の確率を減少させるか?
- 副腎皮質ステロイドは病気の再発の確率を減少させるか?
- コルチコステロイドはHSPにおける腎疾患(一過性+持続性)の発生率を低下させるか?
- コルチコステロイドはHSPにおいて持続的な腎疾患を発症する確率を減少させるか?
といった様々な疑問に答えたメタ解析ですね。
まとめ
今回は、ステロイドの早期治療が小児のIgA血管炎に有効かを検証したシステマティックレビューとメタ解析でした。
早期に投与することで、臨床的に重要ないくつかのメリットはあるかもしれないですね。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/30 02:40:54時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています
当ブログの注意点について