小児科

医療従事者のステロイド恐怖症は?[ベルギー編]

ステロイド恐怖症(ステロイドフォビア)として知られるステロイド外用薬に対する恐怖は、先進国では普遍的な問題である。

これは、アトピー性皮膚炎などの慢性疾患で治療のアドヒアランスが悪い主な理由の一つである。

今回は、医療者側のステロイドフォビアについての研究です。

マミー
マミー
医療者がステロイドを恐れることはありますか?

ユーキ先生
ユーキ先生
公表された研究があったと思います。

Dr.KID
Dr.KID
一緒に見てみましょう。

ポイント

  • ベルギーから発表された研究
  • 薬剤師、総合診療医、小児科医、皮膚科医でもステロイドフォビアは一定数いる

   2019年にベルギーで発表されたようです

医療従事者のステロイド恐怖症は?[ベルギー編]

研究の背景/目的

ステロイド恐怖症は治療のアドヒアランスにおいて大きな問題となっている。

本研究では、外用ステロイド恐怖症(Topical Corticosteroid Phobia (TOPICOP))の質問紙を用いて、医療従事者のステロイド恐怖症を調査した。

研究の方法

TOPICOP質問票は、専門家を対象としたもの(TOPICOP-P)に改良して使用した。

薬剤師、小児科医、開業医、皮膚科医の4つのグループを観察しました。

Dr.KID
Dr.KID
ステロイド外用薬をよく使用する医療者が対象だったようですね

研究の結果

TOPICOPの全世界平均スコアは41.9±14.9%であった。

ステロイド恐怖症のスコアは、

  1. 薬剤師:48.5±13.9%
  2. 開業医:46.0±13.5%
  3. 小児科医:39.7±14.5%
  4. 皮膚科医:32.3±12.1%

であった。

全体として、4群間で平均スコアに統計学的に有意な差があった(p<0.05)。

結論

医療従事者、特に薬剤師や開業医の間ではステロイド恐怖症が顕著であり、これは外用ステロイドの知識不足に基づくものと考えられる。

患者のコンプライアンスを向上させるためには、医療従事者の再教育が必要であると考えられる。

考察と感想

コルチコステロイド恐怖症のスコアは薬剤師が最も高く(48.5±13.9%)、次いで開業医(46.0±13.5%)、小児科医(39.7±14.5%)、皮膚科医(32.3±12.1%)であったようですね。

この研究を評価した先生(Robert T. Brodell MD, FAAD)からも雑誌のページで紹介されたコメントがありました:

This is not a perfect study, as is acknowledged by the authors, but they tried to assess the levels of corticosteroid phobia among pharmacists, primary care physicians, and dermatologists. Do physicians have a core belief that topical steroids are “dangerous” even “when properly used?” My experience tells me that their result is correct. Pharmacists are more likely than primary care physicians who are more likely than dermatologists to believe that topical steroids are dangerous. When this fear is communicated to patients, it can impact their adherence to therapy. I also agree that efforts need to be made to break down barriers in the silos of medical information. Dermatologists need to teach pharmacists and primary care doctors, and a major topic should be the safe and effective use of topical steroids.

参考:https://www.practiceupdate.com/content/topical-corticosteroid-phobia-among-healthcare-professionals-using-the-topicop-score/88288

著者が認めているように完全な研究ではないが、薬剤師、プライマリケア医、皮膚科医の間でのコルチコステロイド恐怖症のレベルを評価しようとしたものである。

医師は、外用ステロイドが 適切に使用されている場合でも「危険である」という核心的な信念を持っているのでしょうか?

私の経験では、彼らの結果が正しいことを教えてくれます。

薬剤師>皮膚科医>プライマリケア医の順に、ステロイド外用剤が危険だと信じている可能性が高い。

この恐怖心が患者に伝われば、治療のアドヒアランスに影響を与える可能性があります。また、医療情報の壁を壊す努力が必要であることにも同意します。

皮膚科医は薬剤師やプライマリーケアの医師に教える必要があり、ステロイド外用剤の安全で効果的な使用法を大きなテーマにすべきです。

Dr.KID
Dr.KID
国外の研究ですので、国によって事情は異なる気もします。

まとめ

この研究では、ステロイド恐怖症の医療従事者を調査しました。

どの職種にもいましたが、この国では、薬剤師に最も多く、総合診療医、小児科、皮膚科の順だったようです。

 

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/10/31 00:12:21時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

Dr.KID
Dr.KID
当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

Dr.KID
Dr.KID
一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

Dr.KID
Dr.KID
ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

 

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。