今回は、乗り物いに対して、スコポラミンと比較して、生姜(ショウガ)は有効かを検証したRCTの紹介です。
- ショウガが、スコポラミンやプラセボと比較して、乗り物酔いの有効かを実験室で検討したクロスオーバー研究
- スコポラミンは回転椅子により誘発される吐き気に有効、ショウガではほとんど効果が認められず。
- 胃の運動や液体の排出量にもほとんど影響していなかった。
Stewart JJ, Wood MJ, Wood CD, Mims ME. Effects of ginger on motion sickness susceptibility and gastric function. Pharmacology. 1991;42(2):111-20. doi: 10.1159/000138781. PMID: 2062873.
1991年にアメリカから公表されたようです。
乗り物酔い予防におけるショウガの効果[アメリカ編]
研究の背景/目的
この研究は、ショウガ根(Zingiber officinale)の乗り物酔いの予防効果を評価し、胃機能に対する影響を特徴付けることを目的とした。
研究の方法
18-40歳の28名のボランティアが参加した。
被験者は、嘔吐を伴わない乗り物酔いの終点(倦怠感III [M-III])に達するまで、回転椅子の上で時間を計って頭を動かした。
各被験者に生姜、スコポラミン、およびプラセボのいずれかを投与した。
プラセボと比較して、より多くの頭部運動が可能であれば、乗り物酔い防止作用を有すると判断した。
健常者と乗り物酔い被験者の核医学的手法により、液体の胃排出量を測定した。
胃の電気的活動は、腹部の皮膚(表面)電極によってモニターされた。
研究の結果
粉末ショウガ(全根、500 mgまたは1,000 mg)または生ショウガ(1,000 mg)は、乗り物酔いに対する予防効果を示さなかった。
一方、スコポラミン(0.6 mg p.o.)投与後、被験者はプラセボ投与後よりも平均147.5回多く頭部運動を行った(p<0.01)。
胃排出速度は、M-III直後の試験では有意に(p < 0.05)遅くなったが、M-IIIの15分後の試験ではあまり阻害されなかった。
粉末ショウガ(500 mg)は健常者および乗り物酔い被験者の胃排出に影響を与えなかった。
また、乗り物酔い時の胃の運動には変化がみられた。
胃電図(EGG)の周波数はM-III後に増加し(頻脈性)、液体摂取後のEGG振幅の正常な増加は、乗り物酔い被験者では減少した。
結論
粉末生姜(500 mg)は、乗り物酔いの胃の頻脈を部分的に抑制したが、乗り物酔い被験者のEGG振幅を増強させることはなかった。
以上より、生姜は乗り物酔い防止作用を有さず、また乗り物酔い時の胃の機能を大きく変化させないことが明らかとなった。
考察と感想
乗り物酔い症状の指標がよく分からなかったので調べてみたのですが、グレイビール・スケール(the Graybiel scale )で16点(倦怠感III [M-III])になるまで続けていたようですね。
Figure 1には、
- スコポラミン vs. プラセボ
- 生姜 vs. プラセボ
のデータが記載されていましたが、スコポラミンは回転椅子を利用した頭の回転数が大きく上昇していましたが、生姜はほとんど認められない状況でした。
また、Figure 2には、平常時と乗り物酔いの時の胃の排出能を検討していましたが、生姜 vs. プラセボでは、ほとんど差がないか、生姜は若干排泄能を鈍くさせている(つまり嘔吐しやすくなるかも)という結果でした。
研究によってデザインが異なったりで、比較は難しいのかもしれないと思ってしまいました。
まとめ
ショウガが、スコポラミンやプラセボと比較して、乗り物酔いの有効かを実験室で検討したクロスオーバー研究となります。
スコポラミンは回転椅子により誘発される吐き気に有効でしたが、ショウガではほとんど効果が認められませんでした。
また、胃の運動や液体の排出量にもほとんど影響していなかったようです。
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