システマティック(系統的)レビューとメタ解析(分析)について一通り知り合い方に向けて、10回ほどに分けて記事を執筆しました。
システマティックレビューとメタ解析は、医療現場、臨床研究や医療政策など、様々な現場で利用される可能性のある研究です。
過去の研究を系統的かつ網羅的に集め、場合によっては統計学的な解析を行い、最終的な結果を提示するのが、この研究の特徴です。
この手順だけを見ていると、「メタ解析の結果」と聞くと、何かものすごく重要な結果と感じてしまうと思います。
もともと質の高い研究を集め、正しい手順で行われ、その分野の専門家の視点も通し、最終的に正しい判断が下されたのであれば、非常に重要な結果と言えるでしょう。
確かに、「現時点でのゴールド・スタンダード」とか「最も質の高いエビデンス」と言われる所以も、ここにあるのでしょう。
しかし、現状に報告されているシステマティックレビューとメタ解析の報告では、必ずしも質の高くないものも多数存在します。
例えば、バイアスだらけの質の低い研究を集めてメタ解析をしても、やはり結果はバイアスだらけの質の低い研究のままです。
このため、「システマティックレビューとメタ解析だから、信頼できる」とか「システマティックレビューとメタ解析こそが、最も強いエビデンス」と安易に言えないケースも多々あります。
2018年の夏頃より、毎週土曜日にシステマティックレビューとメタ解析の記事を書いてきました。目標として
・システマティック・レビューとメタ解析について、ざっくりと把握したい
・使用されている統計手法について、知りたい
・導入編として知識が欲しい
このような方を対象に書いています。
出来るだけ複雑な数式は避けて、言葉で説明するようにしています。
最初の理解の入り口として読んでいただければと思います。
レベルとしては、海外などの大学院など(修士レベル)で行われる導入編の前半くらいです。
メタ解析も非常に奥深い分野ですので、この記事が全てだと思わないでください。
もっと詳しく知りたい方は、参考文献や書籍を読まれることをお勧めします。
第1回:イントロ編(導入編)
こちらではまずはシステマティック・レビューとメタ解析について、導入の導入編くらいの気持ちで書いています。
- システマティック・レビューって具体的に何をしているの?
- なんでわざわざメタ解析なんてするのだろう?
- メタ解析の結果は全て信用して良いの?
などといった、素朴な疑問に答える形で記載しています。
まずは、この研究手法が何かを知りたい方向けの記事です。
第2回:仮説を立てて、文献検索をする
こちらの記事では、メタ解析の研究で実際に仮説を立てて、文献検索をする作業について、表面的な内容を説明しています。
実は仮説を立てるところが非常に重要です。
やみくもに検索を始めると、当初の目的からかけ離れた研究になってしまうので、最初の段階でブレないように仮説を設定する必要があります。
また、システマティック・レビューとメタ解析は非常に根気にいる作業です。
出版後は非常に注目を集めるため、非常に華のある印象かもしれませんが、そこにたどり着くまでは、地道な作業が必要になります。
第3回:異質性について
こちらの記事では、異質性(Heterogeneity)について解説しています。
- どのような時に異質性(Heterogeneity)があるとみなすのか?
- 異質性が生じる原因は何があるのか?
- 異質性の例から考える
仮に10個のRCTの研究結果があるとして、異質性を認める場合、研究結果をそのままメタ解析できないケースもあります。
このため、まずは異質性とは何かを理解することが重要です。
第4回:異質性を統計学的に評価する
こちらの記事では、メタ解析でよく行われる異質性の評価について簡単に記載しています。
- Cochran Q test
- I-squared
- L’abbe plot
といった基本的な統計手法について、図を提示しながら説明しています。
また、異質性を認めた時にどうしたら良いか?、という点も少し補足して記載してあります。
第5回:固定効果とランダム効果について
こちらでは、固定効果とランダム効果について非常に簡単に説明をしています。
具体的には以下の点を触れています。
- 固定効果とは何か?
- ランダム効果とは何か?
- それぞれの利点と欠点は何か?
研究者の中には、固定効果とランダム効果の違いをあまり理解せずに「統計学的な有意差が出やすいかもしれない」という理由のみで前者を選んでいる方もいます。
現に、私が査読したメタ解析の論文や、目にした研究でも、明らかにランダム効果を使うべき場面なのに、固定効果を選んでいるものがありました。
こういった傾向を憂慮した記載になっていますので、少し違和感を感じてしまうことがある方がいるかもしれません。
第6回:出版バイアス(Publication bias)とFunnel Plotについて
こちらでは出版バイアスの考え方と、Funnel Plotについて解説をしています。
具体的には以下のポイントについて、簡潔に説明しています。
- お蔵入り問題(File-Drawer Prpblem)
- P値のハッキング(P-value hacking)
- 出版バイアスの評価方法としてのFunnel Plot
- Funnel Plotの限界
第7回:出版バイアスの評価方法(Begg’s testとEgger’s test)
こちらでは、Funnel Plot以外の出版バイアスの評価方法を解説しました。
- Begg’s test
- Egger’s test
- それぞれの利点と欠点
- Trim and Fill methodと問題点
以上の3つの手法について簡潔に説明しています。
最初の2つの検定はメタ解析の論文を読む際に見かけることと思います。
一方で、Trim and Fill methodは問題点も多くあまり使用されないとは思いますが、知識として知っていても良いでしょう。
第8回:Dose-Response メタ解析について
こちらの記事ではDose-Response Meta-analysesについて解説しています。
- Dose-Response Meta-analysisが必要な状況
- Two-stage approach
- One-stage approach
- それぞれ1つずつの具体例
実例を提示しながら、それぞれの手法を学べる形式にしています。
第9回:メタ解析の実践 その1
こちらでは具体的にメタ解析をどう行っているか、実例を提示しながら解説しています。
統計ソフトはStata®︎を使用しています。
この回では、以下の点を説明しています。
- データの取り込み方
- 固定効果とランダム効果
- Mantel-Haenzel weight と Inverse-variance weight
- 解釈の仕方と問題点
ひとまず、どんな感じで解析をしているのか、その感覚をつかめるように工夫しています。
また、それぞれの手法について、簡単におさらいできるようにしてみました。
第10回:メタ解析の実践 その2
この回では、実際に異質性(Heterogeneity)がある場合にどうしたら良いかをメインに、実例とともに解説しています。
- 第3の因子(Effect modifier)にとって異質性が生じている場合
- 層別化をする
- Meta-regressionを行う
これらを具体的に行ってみました。
実際にメタ解析の手法の知識があるのと、実際に頭を使って手を動かす作業には大きな乖離があります。
メタ解析なら既存のデータでシミュレーションもしやすいので、まだ慣れていないうちは試してみて、論文と答え合わせをしてみると良いでしょう。
最終回:メタ解析の実践 その3
こちらが最終回になります。
最終回では出版バイアスのチェックの仕方、サブグループ解析、連続変数の場合のメタ解析のやり方などを具体的に説明しています。
- Egger’s testとBegg’s test
- Funnel Plot
- サブグループ解析
- 連続変数の解析方法
これまでの解説が二項変数(Binary variable)ばかりでしたが、これも読みやすさを意識して意図的に行ってきました。
このため、最後はやや手短になってしまいましたが、連続変数の場合の解析方法も追加しています。
さらに勉強したい人へ
11回にわたって説明してきたメタ解析ですが、もちろんイントロのイントロレベルです。
最小限のことを理解することで、論文は読みやすくなるでしょうし、センスのいい方だと簡単に解析もできるようになると思います。
ですが、メタ解析をさらに専門的に詳しく知りたい場合は、やはり書籍を読んだ方が良いでしょう。
あえて書籍を1つお勧めするとすれば、上の教科書になります。