「シンバイオティクス(synbiotics)」と言われても何のことかよくわからないので、まず調べてみました。
シンバイオティクスはプロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものである。本概念は1995年にGibson らにより提唱された(Dietary modulation of the human colonic microbiota: introducing the concept of prebiotics. Gibson GR, Roberfroid MB (1995): J Nutr 125(6): 1401-1412.)。
プロバイオティクスが生菌として、腸内菌叢バランスの改善などの作用により宿主動物に有益に働き、プレバイオティクスは腸内有用菌の増殖を促進したり、有害菌の増殖を抑制することにより宿主に有益に作用を有するが、この2つを組み合わせることにより、双方の機能がより効果的に宿主の健康に有利に働くことを目指している。(日本ビフィズス菌センター)
シンバイオティクスは「プロバイオティクス+プレバイオティクス」ということのようですね。
プロバイオティクスは、
- 乳酸菌・ビフィズス菌
などでお馴染みですが、プレバイオティクスは、
- オリゴ糖
- 一部の食物繊維(イヌリンなど)
が該当するようです。
今回はこのプロバイオティクスとプレバイオティクスの合剤であるシンバイオティクスが、小児の急性胃腸炎に有効であるかを検討しています。
研究の方法
こちらの研究は、トルコで行われた他施設共同のランダム化比較試験(Single blind:研究主任者の施設のみ)ですが、
- 3ヶ月〜120ヶ月の入院した小児
- 急性胃腸炎による下痢が1日4回以上ある
- 発症後、12〜72時間以内
- 慢性疾患や重篤な疾患がない
- 1ヶ月以内に抗菌薬の投与なし
- ロタウイルスのワクチンを受けていない
などが研究の対象となっています。
治療は胃腸炎に対する標準治療(経口補水)に加え、
- プロバイオティクス:
L. acidophilus
L. rhamnosus
B. bifidum
B. longum
E. faecium - フルクトオリゴ糖
- ビタミン(A, B1, B2, B6, E, C)
を含むNBL Probiotic Gold®︎ (Nobel, Turkey)を与えるか、追加治療はなしの2グループに分けています。
研究のアウトカム
研究のアウトカムは、
- 入院日数
- 下痢の頻度
- 下痢の期間
をみています。
研究結果と考察
最終的に209人が研究に参加し、
- シンバイオティクス:113人
- コントロール:96人
となりました。
治療前の患者背景のデータは以下の通りです。
入院前の下痢の期間はシンバイオティックグループの方が短いですね。
入院期間の比較
入院期間を比較していますが、
- シンバイオティクス:4.94日
- コントロール:5.77日
とややシンバイオティクスグループの方が短いですが、統計学的な有意差はありませんでした。
下痢の頻度
下痢の頻度を追った結果はこちらになります。
シンバイオティックを使用したグループの方が、24-48時間後の下痢の頻度がやや少なくなっている印象を受けます。
表だと分かりにくいので、グラフにしてみましょう。
確かに、24-48時間のあたりは、下痢の回数が1−2回ほど少なくなっている印象です。
下痢が止まるまでの期間
下痢が持続している人の割合はこちらでみています。
確かに、48-72時間のあたりで、下痢が続いている人はシンバイオティックスの方が少ない印象を受けます。
これは生存解析(Kaplan-Meier Curve)でもできますので、みてみましょう。
Kaplan-Meier Curveにすると、3−4日あたりで下痢が持続している人が減っている印象ですね。
Log-rank testをしてみても、統計学的な有意差がありました。
考察と感想
全体としてはシンバイオティクスを使用したグループの方が、使用後数日後に下痢の頻度が1−2回減り、下痢が回復する期間が若干早くなる印象でした。
問題点としては、やはりプラセボを置いていない点でしょうか。
先日紹介した研究でも、プラセボを使用しておらず、なぜプロバイオティクスなどを使用した研究で盲検化が不十分なのか、疑問を感じてしまいます。
また、治療を受けられなかった人たちのドロップアウト率の高さです。
50%の確率で治療を受けれるなら参加してみたけれども、受けられないとわかったから研究参加をやめたのでしょうか。
こういった偏ったドロップアウトを避けるためにも、プラセボを使用した方が良いと思いました。
まとめ
今回の研究では、トルコの3ヶ月〜12歳の小児でシンバイオティクスは下痢の頻度を治療開始後2ー3日の時点で1−2回ほど少なくし、回復するまでの期間が短くなる傾向にありました。
しかし、盲検化が不十分であったり、ドロップアウト率に偏りがあったりと、やや研究の質に懸念があることに留意が必要です。