科学的根拠のある子育て・育児

システマティックレビューとメタ解析からみた下痢の食事・母乳再開のタイミング

  •  下痢の時、食事や母乳、ミルクはどうしたら良いですか?

という質問はよくあります。

なかには、

  •  腸を休ませるために、食事やミルクは控えて
  •  ミルクより経口補水液にしましょう

などと指導しているケースもあるようです。

もちろん、嘔吐がひどい状況でしたら、食事は控えたほうがよいでしょうし、場合によっては経口補水液でもよいと思います。

しかし、ミルクや母乳が飲める、離乳食が食べられる状況で、わざわざ経口補水液にするメリットはほとんどないと考えられています。

これまでは、個々の論文を解説してきましたが、今回はこのまとめとなるシステマティックレビューとメタ解析をみてみましょう。

ポイント

  • 10歳未満の小児を対象に行われたメタ解析

  • 下痢のときに経口補水液の投与のみに制限すべきか、食事やミルクを早期に再開すべきか検討

  • 経口補水液のみに制限しても、下痢の遷延、嘔吐の回数、体重増加においてメリットはほぼなさそう

マミー
マミー
結局、下痢のとき、食事やミルクはどうしたらいいですか?

Dr.KID
Dr.KID
過去の論文を見て、一緒に考えていきましょう。

小児の下痢のときは、飲める・食べれる状況であれば、これまでの食生活を無理に変更する必要はないと私は考えています。

 研究の概要

今回は、小児の下痢において、離乳食や人工乳などを早期に再開すべきか、すこし遅らせるべきかを検討しています。

 対象患者

対象となったのは、

  •  10歳未満
  •  下痢

のある小児が対象です。

治療

治療は、

  •  12時間以内に食事・ミルクの再開
  •  12時間以降に食事・ミルクの再開

のランダムにわりつけた研究を集めています。

研究結果

結果は以下の通りでした

1. 下痢の期間について

下痢の期間は報告によっておおきくばらつきがありますが、総合的にみると、食事やミルクの再開を遅らせるメリットはなさそうでした。

2. 点滴の可能性について

早期に食事・ミルクを再開しても、(嘔吐が悪化して)点滴が必要となる割合は増えないようです。

3. 嘔吐について

早期に食事・ミルク再開を恐れる理由の1つとして、嘔吐がありますが、嘔吐の頻度が特別高くなるわけではなさそうでした。

4. 下痢が長引く可能性について

「胃腸炎で腸があれている時に、食事やミルクを再開すると、かえって下痢が長くなる」という指導も世の中にはあるようです。

しかし、今回のメタ解析では、早期に食事やミルクを再開したからといって、下痢が14日以上長引く可能性が高まるわけではなさそうでした。

 感想と考察

今回のメタ解析結果では、多くは乳幼児が対象です。

胃腸炎による下痢のときに、特別、ミルクや食事の再開を遅らせても、下痢の期間はほとんど変わらず、体重増加にも影響がなさそうです。

飲食できる状態であれば、特別な制限は不要なのではないでしょうか。

Dr.KID
Dr.KID
下痢の時、無理に食生活を変更する必要はないと思います。これは過去の研究でも、メタ解析でもおなじ結論です

まとめ

今回は、10歳未満の小児を対象に行われたメタ解析で、下痢のときに経口補水液の投与のみに制限すべきか、食事やミルクを早期に再開すべきか検討しています。

経口補水液のみに制限しても、下痢の遷延、嘔吐の回数、体重増加においてメリットはほぼなさそうです。

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。