今回は2012年に発表されたシステマティックレビューとメタ解析の結果がありますので、そちらを参照してみましょう。米国内で行われた研究で、成人の結果も含まれていますが、今回はテーマ通り乳幼児に特化して紐解いていく予定です。
少しだけインフルエンザワクチンの背景について解説します。
インフルエンザワクチンについてですが、アメリカでは1978年から3価不活化ワクチン(TIV)が使用され、インフルエンザ生ワクチンは2003年から使用されているようです。現在は3価から4価に変更されていますが、90%は不活化ワクチン、10%が生ワクチンのようです。
「ユニバーサルワクチン」とは、国民全員が接種するように推奨されたワクチンのことを言います。アメリカにおいては、2010年に季節性インフルエンザワクチンが、ユニバーサルワクチンの対象となりました(ACIP/CDC)。不活化ワクチンの対象は生後6ヶ月以降から、生ワクチンの対象は2-49歳となっています。
- 2012年の米国のシステマティックレビュー
- 米国だけでも乳幼児を対象に複数の研究が行われている
- 多くの研究は、予防効果を示唆している
研究の方法
対象となったのは、
- Medlineで1967-2011まで検索
- ランダム化比較試験または観察研究
などが該当しています。
ワクチンについて
治療は、
- 3価インフルエンザワクチン
- 生ワクチン
のいずれかを調査対象にしています。
アウトカムについて
アウトカムに関しては、
- インフルエンザ感染率
などを見ています。
研究結果と考察
最終的に5707本の文献を検索し、31本が研究対象となりました。
このうち、6-23ヶ月の乳幼児を対象にしたものは:
- 3価不活化:1本
- 生ワクチン:8本(*6ヶ月〜7歳)
となっています。
インフルエンザ不活化ワクチン(3価): RCT
Hobermanらが2003年に発表した論文のみが該当しています。私もこれはブログで解説していますね:
有効性は1999/2000と2000/2001で異なり、
シーズン | VE | 95%CI |
99/00 | 66% | 34 to 82 |
00/01 | -7% | -24 to 67 |
となっています。
インフルエンザ生ワクチン: RCT
インフルエンザ生ワクチンに関しては、生後1歳未満を含む研究は2つ該当しています(Vesikariら、とLumら):
著者 | VE | 95%CI |
Vesikari | 85% | 78 to 90 |
Lum | 64% | 40 to 79 |
観察研究:
2008年にEisenbergやSzilagyiらが、6-59ヶ月を対象にして報告しているようですね。2011年にKellyらの報告もあるようです。:
著者 | シーズン | VE | 95%CI |
Eisenberg | 03/04 | 44% | -42 to 78 |
04/05 | 57% | 28 to 74 | |
Szilagyi | 03/04 | 12% 52% |
-120 to 60 -100 to 90 |
04/05 | 37% 7% |
-50 to 70 -80 to 50 |
|
Kelly | 08 | 68% | 26 to 86 |
シーズンは異なるけれども、有効性を示唆する論文がいくつかあったようですね。
この辺り、私も見逃していいたようなので、さらに報告していこうと思います。
感想と考察
シーズンや対象集団で多少の違いはありそうですが、少なくともインフルエンザワクチンの有効性を示唆した論文が多数あります。
現在は4価の不活化ワクチンを使用しており、B型インフルエンザの予防効果はさらに改善していることが見込まれています。
システマティックレビューは、自分以外の誰かが年月を費やして本気で文献検索をしていただいており、非常に役に立ちますね。見逃したところを追加で調べてみようと思います。
まとめ
今回の研究は、主にアメリカ国内で発表されたインフルエンザワクチンの予防効果を見た研究をシステマティックレビューとメタ解析をしています。
乳幼児のデータは少ないですが、アメリカだけでもすでに2000年代に複数行われており、ワクチンによる予防効果を認めています。
2012年の米国のシステマティックレビューによると…
- 米国だけでも乳幼児を対象に複数の研究が行われている
- 多くの研究は、予防効果を示唆している
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