制吐剤

システマティック・レビューとメタ解析からみた、小児におけるメトクロプラミド(プリンペラン®︎)の安全性

近年、小児において、メトクロプラミド(プリンペラン®︎)の安全性が疑問視されており、その使用に見直しが入っています。

例えば、カナダや欧州はメトクロプラミド(プリンペラン®︎)は、

  • 1歳未満では禁忌(使用してはならない)
  • 5歳未満では慎重投与&5日以上は使用しない

などの勧告がでています。

この方針の理由として、乳幼児の脳血管関門が未熟で、さらに薬のクリアランスが不十分であるため、副作用が出やすいことが懸念されているようです。

今回は、システマティック・レビューとメタ解析からみた、小児におけるメトクロプラミド(プリンペラン®︎)の安全性を評価しています。

参考文献

Lin MLM, et al. The Safety of Metoclopramide in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis. Drug Saf (2016) 39:675–687

 研究の方法

 

今回のシステマティック・レビューは、MEDLINEやEmbaseを利用して、メトクロプラミド(プリンペラン®︎)の安全性を評価しています。医学英文雑誌で公表され、主に18歳以下の小児を対象にして、1%以上の頻度で認めた副作用を評価しています。

 

研究結果と考察

最終的に108の研究、2699人が対象となっています。

副作用についてですが、主に

  • 錐体外路症状:9% (95%CI, 5%〜17%)
  • 下痢:9% (95%CI, 4%〜9%)
  • 鎮静(複数回投与):6% (95%CI, 3%〜12%)
  • 鎮静(単回投与):2% (95%CI, 1%〜5%)

でした。

考察と感想

錐体外路症状が9%は、感覚的なものより多い印象を受けました。メトクロプラミド(プリンペラン®︎)の用量は0.1〜0.3 mg/kg/doseのようで、特別に多いわけではなさそうです。

今回のメタ解析の問題点として、方法論について少し疑問があります。
副作用の生じた割合(%)を対数化(log)し、Standard error (SE)で重み付けしていますが、私ならサンプル数と副作用の数から直接計算する方法を使用したと思います。

また、プラセボ群との比較をRisk ratioやRisk differenceで報告されているものが少なく、相対的にどのくらい危険なのかも不明です。

とはいえ、これらの報告がないからといって、錐体外路症状はそれなりに特異的な所見ですし、メトクロプラミド(プリンペラン®︎)の使用が副作用の恐れがあることにはかわりはないでしょう。

 

まとめ

今回のシステマティック・レビューとメタ解析でメトクロプラミド(プリンペラン®︎)の副作用の頻度を評価していまが、

  • 錐体外路症状:9% (95%CI, 5%〜17%)
  • 下痢:9% (95%CI, 4%〜9%)
  • 鎮静(複数回投与):6% (95%CI, 3%〜12%)
  • 鎮静(単回投与):2% (95%CI, 1%〜5%)

と推定されています。

 

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ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。