今回はチペピジン(アスベリン®︎)の徐放製剤の第I相、第II層試験で使用された研究の紹介になります。
Saito T, Yamashita Y, Tomoda A, Okada T, Umeuchi H, Iwamori S, Shinoda S, Mizuno-Yasuhira A, Urano H, Nishino I, Saito K. Using the drug repositioning approach to develop a novel therapy, tipepidine hibenzate sustained-release tablet (TS-141), for children and adolescents with attention-deficit/hyperactivity disorder. BMC Psychiatry. 2020 Nov 10;20(1):530. doi: 10.1186/s12888-020-02932-2. PMID: 33167920; PMCID: PMC7653993.
注意欠陥/多動性障害を有する小児および青年のための新規治療薬Tipepidine Hibenzate徐放錠(TS-141)の開発におけるドラッグ・リポジショニング・アプローチの使用 [日本編]
研究の背景/目的
アスベリン®(一般名:ヒベンズ酸チペピジン)は、日本において50年以上前から鎮咳薬として使用されています。
近年、チペピジンがGタンパク質活性化内方整流カリウムチャネル(GIRK)を阻害することによりモノアミンレベルを調節することが明らかになり、注意欠陥・多動性障害(ADHD)に対する治療効果が期待されています。
本研究では、薬剤のリポジショニングにより、チペピジンの徐放性錠剤である「TS-141」をADHDの治療薬として開発した。
研究の方法
健康成人において、チペピジン徐放製剤「TS-141」のプロファイルを検討し、TS-141投与後の血漿中チペピジン曝露量をアスベリンと比較する第I相試験を実施した。
第Ⅱ相試験は、ADHDの小児および青年を対象に、アスベリンの最大投与量における曝露量の範囲内で、TS-141の30mg(1日1回)、60mg(1日1回)、120mg(1日2回)およびプラセボの効果を検証するために、ADHDと診断された6~17歳の児童および青年を対象に、8週間の治療、無作為並行群、プラセボ比較試験として計画されたもの。
合計216名の患者さんがCYP2D6の表現型に従って無作為に割り付けられました。主要評価項目は、ADHD評価尺度IV-Jの変化としました。さらに、サブグループ解析において、CYP2D6の表現型が有効性に及ぼす影響も検討した。
研究の結果
TS-141は徐放性プロファイルを有し、CYP2D6表現型はチペピジンの血漿中曝露量に影響を及ぼした。
TS-141の全用量においてADHD RS-IV-Jスコアはベースラインより低下したが、プラセボ投与群とTS-141投与群の間でADHD RS-IV-Jスコアの変化に統計学的な有意差はみられなかった。
CYP2D6中間代謝体である患者では、120mg投与群のADHD RS-IV-Jスコアの変化はプラセボ投与群よりも大きい傾向がみられた。
結論
TS-141によるADHD RS-IV-Jの変化は、TS-141の用量とCYP2D6の表現型との相互作用に依存すると考えられ、多型を考慮したさらなる臨床試験の実施が必要であることが示唆された。
TS-141は鎮咳剤と同用量でドラッグリポジショニングが試みられたが,適応に応じた用量設定が必要であった。
考察と感想
Tipepidineを徐放製剤にして使用というところに、合理性と熱意を感じました。
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