トイレトレーニング(以下:トイトレ)を開始する際、隠れて排便をしようとする幼児が一定数います。
隠れて排便をする小児は、トイトレが少し長引いてしまう傾向があるようで、今回はその事実を調査した研究になります。
- アメリカで行われたコホート研究
- トイトレ前に、隠れて排便する傾向のあるお子さんは、のちに便秘が明るみになり、トイトレの完了が遅れる傾向にある
- 「隠れる」という行為は、何かしら排便に関する不調のサインかもしれない
フリーアクセスの文献です↓
研究の概要
今回の研究は、2003年にアメリカから報告されたコホート研究です。
17〜19ヶ月の小児378名が対象で、主に中流〜上流の白人家庭が参加しているようです。
参加時に「排便の際に隠れてしまうか」を質問し、トイトレを開始してもらい、その後2〜3ヶ月毎
- トイトレの拒否率
- 便秘の発症率
- 排便を我慢してしまう率
- トイトレの完了時期
を2つのグループで比較しています。
研究結果
結果は以下の通りでした:
隠れて排便 | あり | なし |
N | 263 (69.6%) |
115 (30.4%) |
トイトレの拒否 | 29.4% | 16.0% |
便秘 | 62.2% | 39.6% |
便を我慢する | 29.1% | 12.1% |
トイトレ完了 | 38.1ヶ月 | 34.5ヶ月 |
トイトレ開始前に、排便時に隠れてしまうお子さんは、その後にトイトレ拒否、便秘などが発見されることが多く、さらにトイトレの完了時期が4ヶ月ほど遅い傾向にありました。
感想と考察
排便時に隠れてしまうお子さんの理由は様々でしょう。例えば、排便する時に痛い、便に関する嫌な記憶がある、羞恥心などがあげられます。このようなお子さんには、排便のコントロールや切れ痔の治療などをすることで、トイトレに対する恐怖心が軽減するかもしれません。
疫学的な視点でいうと、少しミスリーディングな研究のようにも思います。DAGを書けば一目瞭然ですが、
非常に単純化すると、上の図のような構造が考えられます。
何が言いたいかというと、「排便時に隠れる」のがトイトレが遅れてしまう原因ではないということです。排便時に隠れてしまう行動をとるお子さんを、無理やり隠れられないようにしても意味がないからです。
おそらく、「隠れて排泄をせざるえない上流の理由」つまり未診断の便秘であったり、硬い便や、心理的な負担を軽減させてあげないといけないでしょう。
まとめ
今回はアメリカのコホートを紹介しました。
トイトレ開始前に、排便時に隠れてしまうお子さんは、その後にトイトレ拒否、便秘などが発見されることが多く、さらにトイトレの完了時期が4ヶ月ほど遅い傾向にありました。
トイトレ前に、便秘があれば治療しておいた方が良いかもしれないですね。
- アメリカで行われたコホート研究
- トイトレ前に、隠れて排便する傾向のあるお子さんは、のちに便秘が明るみになり、トイトレの完了が遅れる傾向にある
- 「隠れる」という行為は、何かしら排便に関する不調のサインかもしれない