今回は、小児の検尿におけるモニタリングに関してです。
この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。
- Choosing wisely:小児の検尿に関して
- 必要な状態でない限り、ルーチンで検査を繰り返さない
American Academy of PediatricsからのChoosing Wisely
健診の一環として、スクリーニング尿検査をルーチンにしない[Choosing wisely]
Don’t order routine screening urine analyses (UA) in healthy, asymptomatic pediatric patients as part of routine well child care.
Research has shown a high incidence of misinterpretation of positive tests of screening urinalysis lead to multiple testing and increased cost and family anxiety. This is counterbalanced by the low prevalence of chronic kidney disease (CKD) and bladder cancer in children. One study showed that the calculated false positive/transient abnormality rate approaches 84%. These factors account for the low yield in detecting preventable and/or treatable problems in a healthy asymptomatic population with respect to cost and overall benefit.
With consideration of the currently available evidence, we recommend limiting screening UA in patients who are at high risk for chronic kidney disease (CKD), including but not necessarily limited to patients with a personal history of CKD, acute kidney injury (AKI), congenital anomalies of the urinary tract, acute nephritis, hypertension (HTN), active systemic disease, prematurity, intrauterine growth retardation, or a family history of genetic renal disease, to improve the cost-benefit ratio.
健康で無症状の小児患者に対して、健診の一環として、定期的なスクリーニング尿検査(UA)をルーチンに依頼してはいけません。
スクリーニング尿検査の陽性反応を誤って解釈するケースが多く、その結果、複数回の検査が必要となり、コストや家族の不安が増大することが研究で明らかになっています。
これは、小児における慢性腎臓病(CKD)や膀胱がんの有病率が低いことと相殺されます。
ある研究では、計算上の偽陽性/一過性の異常率が84%ほどと示されています。これらの要因により、健康な無症候性集団における予防・治療可能な問題の発見率は、コストと全体的な利益の観点から見て低いものとなっている。
現在得られているエビデンスを考慮すると、費用対効果を高めるために、慢性腎臓病(CKD)のリスクが高い患者(CKD、急性腎障害(AKI)、尿路の先天異常、急性腎炎、高血圧(HTN)、活動性全身疾患、未熟児、子宮内発育遅延、遺伝性腎疾患の家族歴を持つ患者を含むが、必ずしもこれらに限定されない)を対象としてUAスクリーニングを行うことを推奨する。
考察と感想
学校検尿の是非は日本でも時々話題になりますね。費用対効果からは否定的な見解があるのはその通りなのですが、一方で、稀ではあるものの、慢性の腎疾患が早期発見され、早期治療となっている例も中にはあるのだと思います。
この辺りの議論は、医療政策や疫学だけではなく、小児の腎臓の専門家も入れて、慎重に議論を行う必要があります。「アメリカではXXだから」と思考を停止して右に倣えをするのは得策ではありません。
参考文献も読んでみようと思います:
Committee on Practice and Ambulatory Medicine and Bright Futures Steering Committee. Recommendations for preventive pediatric health care. Pediatrics 2007; 120(6): 1376.
Kaplan RE, Springate JE, Feld LG. Screening dipstick urinalysis: a time to change. Pediatrics.1997; 100(6):919 –921.
Sekhar DL, Wang L,. Hollenbeak CS, Widome MD, Paul IM. Pediatrics 2010 125 (4); 660 – 663. A Cost-effectiveness Analysis of Screening Urine Dipsticks in Well-Child Care.
Hogg, R. Screening for CKD in Children: A global controversy. Clin J Am Soc Neph 2009 4:509-515.
まとめ
今回は、小児の検尿に関するchoosing wiselyをご紹介しました。
これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。
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Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
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こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
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