今回は、UKの小児ITP患者において、血小板数によって出血の重症度が異なるかをみた研究です。
-
小児ITPを血小板数でグループ分けし、重篤な出血の重症度を比較
-
血小板数が低いほうが中等度〜重度の出血リスクはやや上昇
-
輸血必要例はわずか2例、頭蓋内出血や死亡例はいなかった
ITPはかつて特発性血小板減少性紫斑病 or 免疫性血小板減少性紫斑病、その後、免疫性血小板減少症と呼び名が変わっています。
研究の概要
背景・目的
UKでは、小児の急性免疫性血小板減少性紫斑病 (ITP) の治療ガイドラインは1992年に発表された。
1995年の地域調査では、患者の臨床的な問題の差異とは関係なく、医師の行う診療にかなりのばらつきがあることが示された。このため、今回の全国調査の必要性が示された。
方法
小児科医または血液内科医の14ヶ月以上にわたる定期的な郵便により、ITPを新たに発症した0〜16歳の小児が確認された。
さらに、新規の症例に対しては、アンケートを利用した追跡調査を行い、詳細な臨床情報を得た。
結果
血小板数 < 10,000/μLの260例中181例 (70%) を含む427例中323例 (76%) で
260例中181例 (70%) のITPは臨床的に軽度で良性であった。このうち、血小板数 < 10,000/μLの260例中181例 (70%) は「軽度」と判断されていた。
死亡や頭蓋内出血はなかった。
診療パターンと公表されたガイドラインとの間にはかなりの食い違いを認めていた。多くの小児が入院し、不必要に治療を受けていた。例えば、
- 初期治療として静注用免疫グロブリン (IVIG) の過剰使用があった(94人の小児)。
- 骨髄検査なしでステロイドを投与された小児
- 血小板輸血の不適切な使用(軽度または中等度:41人
が挙げられる。
結論
この結果は、ガイドラインと実臨床に乖離があり、これを変化させることが必要と示唆される。
考察と感想
血小板数と重症度の分布を見た図は以下の通りだったようです。
重度の出血でも輸血が必要であった症例は2例(0.5%)で、頭蓋内出血や死亡例はいなかったようです。
まとめ
今回の研究は、小児ITPを血小板数でグループ分けし、重篤な出血の重症度を比較しています。
血小板数が低いほうが中等度〜重度の出血リスクはやや上昇しているように見えます。
一方で、輸血が必要だった症例はわずか2例、頭蓋内出血や死亡例はいなかったようです。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
Noteもやっています