- 保育園に通い出したら、風邪ばかり引いてしまいます
- 風邪ばかり引いていて、将来大丈夫か不安です
などと小児科外来でご相談されることがあります。確かに、やっと保育園に入れたかと思ったら、風邪ばかり引いて、時に混み合う小児科外来に受診するようでしたら、いろんな不安や不満が出てきてしまうのは仕方ないでしょう。
こちらでも少し詳しくしていますが、保育園・幼稚園に入園後はよく風邪をもらいます。このため、保育園などに入園したことを「損をした」ように感じてしまう方がいるかもしれません。
しかし、乳幼児期に風邪を多く引いたお子さんは、小学生の期間は逆に風邪にかかりにくかったという研究結果があります。今回はこちらのデータを紹介しましょう。
研究の方法
今回の研究は、1980年代に行われたアメリカのコホート研究になります。こちらの研究では、1246名の小児を追跡しており、乳幼児期の保育園の通園が、その後のかぜの回数にどのくらい影響しているかを検討しています。
保育園への通園ですが、
- 6人以上のクラス
- 6人未満のクラス
- なし
の3通りに分けています。
風邪を起こした回数を2〜13歳までの間で報告してもらい、それぞれの通園状況で分けて比較しています。
観察研究ですので、統計モデルで交絡因子は対処しています。交絡因子として、性別、母の教育、子供の数、母乳、人種、ペット、受動喫煙、アレルギー性鼻炎の既往などを対処しています。
研究結果と考察
1246名のコホートでしたが、データをきちんと集められたのは991名でした。「頻回の風邪」は4回以上の風邪と定義し、「あり/なし」の二項変数でオッズ比を比較しています。
3歳未満が保育園に行くと、乳幼児期は風邪を引きやすくなるが、小学生では風邪をひくにくくなる
保育園に通園していない乳幼児と比較して、1クラスに6人以上いる保育園に通園していた場合、2歳時に頻回に風邪を引く可能性はオッズ比にして1.9倍、3歳時はオッズ比にして1.4倍に上昇していました。
つまり、〜2歳くらいのお子さんが保育園に通いだすと、風邪を繰り返し引いてしまうことがわかります。
一方で、保育園に通園していたお子さんは、6〜11歳の期間は頻回に風邪をひくことが減っているのがわかります。例えば、頻回に風邪をひく可能性は6歳時に0.1倍、11歳時に0.4倍と下がっています。
つまり、保育園に通園した場合、3歳くらいまでは風邪を他の子より多く引いてしまうかもしれません。しかし、通園していたお子さんは、6歳〜11歳の期間は他の子供より風邪を引きにくい体になっているのがわかります。
この論文の著者らは、乳幼児期に風邪を繰り返すことで、免疫システムが強化され、その後のかぜの予防効果を発揮しているのではないかと考察しています。
まとめ
今回の研究では、乳幼児が保育園に通園すると2〜3歳では風邪を頻回に引いてしまいますが、6〜11歳の間は他の子供より風邪を引きにくくなるのが分かりました。
これは臨床医の感覚ともよくマッチするのではないでしょうか。
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