川崎病は、発熱、目の充血、唇の発赤、手足の腫れ、体幹の発疹などを特徴にした、こどもの病気です。日本では非常に多く認められ、年間で10000人前後の小児が罹患しているとも考えられています。
アメリカにおいても川崎病は報告されており、Kawasaki Diseaseとして知られています。
古くから様々な疫学調査や臨床試験が行われていることでも有名です。
今回は、アメリカにおける古い疫学データを発見しましたので、そちらを報告させていただこうと思います。
川崎病の一般的な内容を知りたい方は、以下の記事を読んでみると良いでしょう:
- 1988-1998年におけるアメリカの川崎病の疫学研究
アメリカのNIS (National Inpatient Sample) を利用したデータです。
アメリカにおける小児の川崎病の疫学は?
研究の背景
米国における10年間の川崎病 (KD) の疫学的パターンを評価すること。
研究の方法
米国の22州の990病院以上の層別化サンプルであるNational Inpatient Sampleを使用した。
1988~1997年の退院に関するデータを分析し、KDの退院診断を有する18歳未満の患者を同定した。
研究の結果
KD患者6442名が651病院に入院した。
入院時の年齢中央値は2歳で、年齢別発生率のピークは1歳であった:
- 2歳未満:36.6%
- 5歳未満:75.6%
- 10歳未満:95.6%
であった。年齢分布は日本で報告されているよりも広いようである。
5歳未満児の発症率は、100,000人のうち8.1例 (1988年) , 18.5例 (1997年) であった。
男女比は1.54で、冬と春に発生率が高く(12~5月)、七月と九月に最低となった。
季節パターンの明らかな変化は10年間認められなかった。
南部地域は、他の地域よりも2〜3カ月早く季節性の変化を示した。
全体の院内死亡率は0.17%であった。
10歳以上の死亡率 (1.4%) は10歳未満の死亡率 (0.11%) よりも高かった。
結論
KDは主に5歳未満の小児が罹患し、発生率のピークは1~2歳の小児である。
KDの発生率は研究期間中に上昇していた。
KDは年間を通じて発生するが、発生率が最も低いのは7月から9月である。
このような季節変動は10年間変化しなかった。
季節パターンは地理的地域によって異なることがある。
KDによる死亡はまれであるが, 10歳以上の小児ではリスクが高い。
考察と感想
私が知りたかったデータは以下の点でした:
88 | 89 | 90-97 | |
入院日数 | |||
中央値 | 5 | 4 | 3 |
平均 | 4.3 (SD, 4.8) | ||
医療費 | |||
中央値 | $5652 | ||
平均 | $8025 (12,016) |
最近は2日くらいのようですが。おそらくIVIGの投与期間が4−5日→12時間に短縮されたのもあるかもしれないですね。本文にはあまりコストや入院日数に関するコメントはなかったです。
1ドル110円くらいで換算しても、1入院で90万円くらいするのですね。
まとめ
今回は、アメリカの川崎病における疫学調査をした古い研究でした。
アップデートされた論文もあるようなので、後日、紹介できればと思います。
川崎病の記事はいくつかあります:
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
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