川崎病は、小児の原因不明の血管炎として知られています。
発熱、目の充血、唇の発赤、手足の腫れ、体幹の発疹などを特徴にした、こどもの病気です。日本では非常に多く認められ、年間で10000人前後の小児が罹患しているとも考えられています。
アメリカにおいても川崎病は報告されており、Kawasaki Diseaseとして知られています。
古くから様々な疫学調査や臨床試験が行われていることでも有名です。
今回は、アメリカにおける2000年前後の疫学データを発見しましたので、そちらを報告させていただこうと思います。
川崎病の一般的な内容を知りたい方は、以下の記事を読んでみると良いでしょう:
- 1997-2008年におけるアメリカの川崎病の疫学研究
アメリカのNIS (National Inpatient Sample) を利用したデータです。
アメリカにおけるこどもの川崎病の疫学調査は?
研究の背景
本研究は,米国におけるKawasaki症候群 (KS) による小児期の入院率と傾向を記述する。
研究の方法
Kids’Inpatient Database (1997、2000、2003、および2006)およびNationwide Inpatient Sample (1998-2007) を用いた、米国の18歳未満の小児におけるKD入院の後方視的な分析である。
研究の結果
2006年の5歳未満児のKD関連入院率は20.8 (95%信頼区間:18.5-23.1)/10万人であった。
年間入院率は2005年のピークを除いて研究期間中はほぼ一定であった。
2006年では、KD入院の76.8% (SE=0.9%)が5歳未満であった。
入院時の全小児の平均年齢は3.0歳(SE≦0.1)であった。
男子の比率は女子より高かった。
また、アジア系の子供(30.3/10万 [95%信頼区間:20.2-40.4])の発症率は,人種グループの中で最も高かった。
結論
1997年から2007年までの5歳未満児のKDの入院率は, 2005年を除いて、比較的安定しており、以前に発表された値と類似していた。
大部分の入院は3歳未満の小児であり、生後2ヶ月未満はほとんどいなかった。
入院率が最も高かったのはアジア系の小児であった。
考察と感想
こちらは前回のブログで調べた入院日数と医療費です:
88 | 89 | 90-97 | |
入院日数 | |||
中央値 | 5 | 4 | 3 |
平均 | 4.3 (SD, 4.8) | ||
医療費 | |||
中央値 | $5652 | ||
平均 | $8025 (12,016) |
今回の研究は、1996-2006のデータになりますが、
- 入院日数: 中央値, 2.3日;平均, 3.5日
- 医療費;中央値, $15,018;平均, $19,362
となります。
コスト増の要因の1つとして、医療費のインフレもあるかと思います。
まとめ
今回は、アメリカの川崎病における疫学調査をした2000年代の研究でした。
1入院あたりの医療費や入院日数は日本とは大きく異なる内容ですね。
川崎病の記事はいくつかあります:
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
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小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
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