感染症

小児における尿路感染症の疫学;原因菌と抗菌薬療法 [日本編]

日本国内の小児の尿路感染症について、どのような菌が検出されるのが一般的なのでしょうか。今回はこの点を言及した論文をご紹介いたします。

マミー
マミー
尿路感染症はどのような菌で起こるのでしょうか?

ユーキ先生
ユーキ先生
大腸菌が一般的には多いと思います。

Dr.KID
Dr.KID
論文を読んでみましょう

ポイント

  • 日本の乳幼児の尿路感染症の疫学論文
  • 小児尿路感染症において,大腸菌は最も一般的な病原体
  • 抗菌療法としては,第3世代セファロスポリン単剤療法,アンピシリンとの併用療法でおよそ治療可能であった

参考文献

Tanaka Y, Oishi T, Ono S, Kono M, Kato A, Miyata I, Ohno N, Ouchi K. Epidemiology of urinary tract infections in children: Causative bacteria and antimicrobial therapy. Pediatr Int. 2021 Oct;63(10):1198-1204. doi: 10.1111/ped.14639. Epub 2021 Sep 16. PMID: 33544943.

 2021年に日本から公表されたようです

小児における尿路感染症の疫学;原因菌と抗菌薬療法
[日本編]

研究の背景/目的

尿路感染症(UTI)は小児における最も一般的な細菌感染症である。

本研究では,小児の発熱性尿路感染症における原因菌の特徴および抗菌薬療法の有効性について検討することを目的とした.

研究の方法

2009年7月~2016年10月に川崎医科大学附属病院に入院した発熱性UTI患者108例(130エピソード)の臨床記録をレトロスペクティブに検討した。

原因菌の特徴、抗菌療法、治療効果について検証した。

Dr.KID
Dr.KID
日本国内からの貴重なデータですね。

研究の結果

患者の年齢は 0~183 ヵ月(中央値:3 ヵ月)であった。73名(67.6%)が男性であった。63例(48.5%)が複雑性尿路感染症と診断された。生後3か月未満の患者には47件(36.2%)が認められ,そのうち15件が複雑性尿路感染症であった。

病原体はEscherichia coli(大腸菌)が最も多く,次いでEnterococcus faecalis(フェカリス菌)であった。血液培養は3エピソードで陽性であった。

130例のうち,アンピシリンと第3世代セファロスポリンの併用が62例(47.7%),次いで第3世代セファロスポリン(31例,23.8%),Sulbactam sodium / ampicillin sodium(15例,11.5%)であった。

合併症のない生後3カ月未満と3カ月以上の尿路感染症患者では,病原体は大腸菌が最も多く,次いでフェカリス菌であった。

大腸菌による尿路感染症に対する治療効果は,アンピシリンと第3世代セファロスポリンの併用療法と第3世代セファロスポリン単独療法で差はなかった。

結論

小児尿路感染症において,大腸菌は最も一般的な病原体である。

抗菌療法としては,第3世代セファロスポリン単剤療法が有効であり,アンピシリンとの併用療法を必要としない場合もある。

考察と感想

セファゾリン(CEZ),セフメタゾール(CMZ),セフォチアム(CTM),セフトリアキソン(CTRX),セフォタキシム(CTX)がエンピリック治療として推奨されている背景があったようです。

Dr.KID
Dr.KID
ガイドラインがあることを知らなかったです:Japanese Association for Infectious Diseases/Japanese Society of Chemotherapy, JAID/JSC Guide/Guidelines to ClinicalManagement of Infectious Disease Preparing Committee.2019.XI Urinary tract infections, the JAID/JSC guide to clinical management of infectious diseases 2019. Tokyo, 201。

起因菌の内訳としては、大腸菌が6割強、Enterococcus faecalisが15%くらい、残りは5%未満で緑膿菌、クラブシエラ、シトロバクターだったようです。

ESBLは大腸菌検出例の1割未満で決して多くはなかく、ABPC+3rd cephalosporin, 3rd cephalosporin, SBT/ABPCで大半は治療可能だったようです。

一方で、日本でもESBLの検出率は7−22%とばらつきがある点も言及されていました。

  • Kimata T, Tsuji S, Kaneko K. Current concept on urinary tract infections in children.Jpn. J. Pediatr. Nephrol.2014;27:105–16.
  • Narita A, Nishimura N, Arakawa Yet al. A clinical and bacteriological study of pediatric urinary tract infection in a hospital.J. Pediatr. Infect. Dis. Immunol.2009;21: 223–9.
  • Fujishiro N, Nishimura N, Kito Set al. Causative strains and antimicrobial susceptibility profiles in pediatric upper urinary tract infections during the past 7 years.J. Pediatr. Infect. Dis.Immunol.2017;29:9–15.
  • Nakamura T, Komatsu M, Yamasaki Ket al. Epidemiology ofEscherichia coli, Klebsiella species, and Proteus mirabilis strains producing extended-spectrum- lactamases from clinical samples in the Kinki Region of Japan.Am. J. Clin.Pathol.2012;137: 620–6.

この辺りもしっかり読んでおこうと思います。

まとめ

日本の乳幼児の尿路感染症の疫学論文でした。

小児尿路感染症において,大腸菌は最も一般的な病原体である。

抗菌療法としては,第3世代セファロスポリン単剤療法が有効であり,アンピシリンとの併用療法を必要としない場合もある。

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このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。