今回は小児における尿路感染症の抗生剤の治療戦略についてです。
- UTIは生後90日未満の乳児に最も多くみられる重篤な細菌感染症
- 髄膜炎を除外し、敗血症の特徴がなければ、生後90日未満の乳児に対して、菌血性UTIでは7日以下、非菌血性UTIでは3日以下の短い抗生剤の点滴期間を検討
Hikmat S, Lawrence J, Gwee A. Short Intravenous Antibiotic Courses for Urinary Infections in Young Infants: A Systematic Review. Pediatrics. 2022 Feb 1;149(2):e2021052466. doi: 10.1542/peds.2021-052466. PMID: 35075480.
2022年にPediatricsから公表されたようです。
幼小児における尿路感染症に対する短期間の抗生物質静注コース[システマティックレビュー編]
研究の背景/目的
尿路感染症(UTI)は幼児に多くみられるが,静脈内治療の至適期間に関する指針はない.
生後90日以内の乳児の尿路感染症の管理に、より短い抗生剤の静注コース(7日以下)が適切であるかどうかを検討することを目的として、システマティックレビューが行われた。
研究の方法
PubMed,Cochrane Library,Medline,Embase(2021年2月)をデータソースとして用いた。含まれる研究は,生後90日以下の乳児のUTIに関するオリジナルデータを報告し,短期の抗生物質静注期間(7日以下)を研究し,少なくとも1つの治療アウトカムを記述したものである。PRISMAガイドラインに従った。
研究のスクリーニングは2名の研究者が行い、Newcastle-Ottawa ScaleとRevised Cochrane Risk-of-Bias Toolを用いてバイアスを評価した。
研究の結果
16,615人の幼児を対象とした18件の研究が含まれた。
菌血性尿路感染症に関する最大規模の2件の研究では、7日以下の抗生物質静注療法と7日以上の抗生物質静注療法の間で、30日後の再発率に差はみられなかった。
非菌血症性尿路感染症では,最大規模の2件の研究で,3日以内の抗生物質静注療法と3日以上の抗生物質静注療法の間で,調整後の30日後再発率に差はなかった.
生後30日以上の乳児を対象とした3件の研究では、経口抗生物質のみを使用し、良好な転帰を報告していたが、生後90日未満の乳児は85人のみであった。
結論
髄膜炎を除外したのちに、菌血性尿路感染症および非菌血性尿路感染症の生後90日以内の乳児には,抗生剤の静注コースを7日以下,3日以下に短縮し,早期に経口剤に切り替えることを検討すべきと考えられた。
この年齢層では,経口抗生物質のみによる治療について,さらなる検討が必要である。
考察と感想
抗生物質の静脈内投与期間を短縮し、早期に経口投与に切り替えることは、小児とその家族のQOLを向上させ、入院期間、院内感染のリスク、医療費を削減することができるから重要であると思いました。
一方で、経口投与の切り替えるかは、その地域での耐性菌の分布、薬剤感受性の結果が分かるまでの時間など、様々な要素が絡んでくる気がします。
まとめ
UTIは生後90日未満の乳児に最も多くみられる重篤な細菌感染症です。
髄膜炎を除外し、敗血症の特徴がなければ、生後90日未満の乳児に対して、菌血性UTIでは7日以下、非菌血性UTIでは3日以下の短い抗生剤の点滴期間を検討すべきであることが本研究で明らかにされました。
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