- ワクチン接種後に発熱するのが怖いです
- あらかじめ解熱薬を使用してよいでしょうか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防として使用したい」と考える保護者もいるようです。
一方で、ワクチン接種直後に解熱薬を使用すると、抗体の産生に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、解熱薬の使用とそのタイミングに関して知っておいた方が良いと思います。
- ワクチン接種後の発熱に対して、解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 接種直後に使用すると、抗体の産生に悪影響があるかも
- 特に初回はその傾向が強い
Lancet. 2009 Oct 17;374(9698):1339-50.
パラセタモールはアセトアミノフェンのことです。
乳幼児のワクチン接種時の解熱薬は、発熱の予防になるが、抗体産生に悪影響?
研究の背景/目的
発熱は免疫後の正常な炎症反応の一部であるが, 高熱および熱性痙攣の懸念を和らげるために, 予防的解熱薬がときに推奨される。
ワクチン接種時のパラセタモールの予防投与が, 乳児の発熱反応率とワクチン反応に及ぼす影響を評価した。
研究の方法
二つの連続したワクチン接種(プライマリー・ブースター)において、、非盲検ランダム化研究が実施された。
対象者は、459人の健康な幼児をチェコ共和国の10施設から登録した。
各ワクチン接種後, 最初の24時間に6~8時間毎にパラセタモールの予防投与を受ける群 (n=226) と受けない群 (n=233) に,コンピュータで作成した無作為化リストを用いて乳児をランダムに割り付けた。
ワクチンは、
- 六価ワクチン[ジフテリア・破傷風・百日咳・B型肝炎・不活化ポリオウイルス1型, 2型,および3‐Hインフルエンザウイルスb型 (DTPa‐HBV‐IPV/Hib)]
- 十価肺炎球菌/インフルエンザ菌ワクチン (PHiD‐CV)
- 経口ロタウイルスワクチン
を使用した。
両試験の主な目的は、全ワクチン接種コホートにおける38.0°C以上の発熱反応の減少であった。
第2の目的は,プロトコールに従ったコホートにおける免疫原性の評価であった。
研究の結果
39.5°Cを超える発熱は両群でまれであった:
予防 | あり | なし |
1回目 | 1/226 (<1%) |
3/233 (1%) |
2 回目 | 3/178 (2%) |
2/172 (1%) |
投与後に体温が38°C以上になった小児の割合は, 予防的パラセタモール投与群の方が低かった。
予防 | あり | なし |
1回目 | 94/226 (42%) |
154/233 (66%) |
2 回目 | 64/178 (36%) |
100/172 (58%) |
10種の肺炎球菌ワクチン血清型,プロテインD,抗ポリリボシルリビトールリン酸,抗ジフテリア,抗破傷風,及び抗ペルタクチンに対する一次ワクチン接種後の抗体の幾何平均濃度 (GMC) は,予 防的パラセタモール非接種群よりも予防的パラセタモール接種群で低かった。
追加接種後も,抗体の幾何平均濃度の低下は,抗破傷風,蛋白質Dおよび19 F以外の全ての肺炎球菌血清型において、持続していた。
結論
発熱反応は低下したが, いくつかのワクチン抗原に対する抗体反応が低下したため,ワクチン接種時の解熱薬の予防的投与はルーチンには推奨されない。
考察と感想
ワクチン接種後に熱が出るのが不安で、予防的に解熱薬を内服させたがる保護者も稀に遭遇します。
もちろん、発熱や痛みがあればお子さんが辛い思いをするので、それを事前に回避したいという親心から来ているのは分かります。
今回の結果は、発熱そのものの予防効果があるものの、抗体の獲得には不利のようですね。
まとめ
今回は、チェコで行われた研究で、ワクチン接種後の解熱薬の使用が、抗体価の獲得に影響するかを検討しています。
解熱薬は発熱の予防になるものの、ワクチン接種直後は抗体産生に悪影響がある可能性が示唆され、特に初回接種時にその傾向が強かったようです。
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