- ワクチン接種後に赤く腫れ上がったり、熱が出るのが怖いです
- あらかじめ解熱薬を使用すると改善しますか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防的に解熱・鎮痛薬を」と考える方もいるようですが、実際のところ予防効果は本当にあるのでしょうか。
アセトアミノフェンを使用した研究は複数あり、今回は、0歳の小児において、DTPワクチン接種直後に使用した研究をご紹介します。
- ワクチン接種後の解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 発熱や著しい不機嫌のリスクは減る印象
- 抗体獲得への影響は評価されていない
Eastern Journal of Medicine 16 (2011) 258-260
パラセタモール=アセトアミノフェンです
アセトアミノフェンは、ワクチン接種直後に使用すると、発熱は減少するか?
研究の背景/目的
予防接種は公衆衛生分野の大きな成果の一つである。
ジフテリア・破傷風トキソイドや百日咳 (DTP) ワクチン接種後には,局所反応や全身症状といった様々な副作用が頻発する。
研究の方法
本研究は, 300人の小児を対象に、二重盲検対照法で, DTPワクチン接種の最初の24時間の間の反応に対する予防的パラセタモールの効果を測定するために実施した。
研究の結果
有害事象は,予防的パラセタモール群と比較してプラセボ群で全体的に高かった。
4つの年齢群すべてにおいて,発熱に関して差が認められた。
また,すべての年齢群で不機嫌の多さについて差が認められた
結論
DTPワクチン接種後の有害事象の減少において、予防的パラセタモールの全体的な有益な効果があると結論した。
考察と感想
あっさりとしたabstractですので、少しだけないよを補足します。
2009-10年に、インドで小児300人を対象に行われた研究のようです。
DPT(三種混合)ワクチンは、6, 10, 14週と18ヶ月で接種されるのが一般的のようです。
アセトアミノフェン(A)またはプラセボ(P)は、ワクチン接種1時間前に投与されたようです。その後は、6時間後、12時間後、18時間後に投与されています。
A | P | |
N | 150人 | 150人 |
発熱 | 28人 | 83人 |
発赤 | 72人 | 82人 |
局所痛 | 121人 | 128人 |
食事拒否 | 2人 | 13人 |
不機嫌 | 62人 | 111人 |
結果としては、発熱や食事の拒否、不機嫌といった頻度は、アセトアミノフェンを投与したグループの方がリスクは低い印象でした。
一方で、この研究が発表された時期に、ワクチン接種の直前・直後に予防的に解熱薬を使用すると、抗体の獲得率が低下するという結果が報告されたようです。このため著者らも、積極的に推奨するのではなく、まだ研究が必要と述べていました。
まとめ
今回は、インドで行われた研究で、ワクチン接種後の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)の使用が、発熱などの有害事象のリスクを軽減するかみています。
ワクチン接種直後に解熱薬を使用したグループは、発熱のリスクはやや低く、著しい不機嫌となる可能性も低かったようです。
一方で、この研究では、過去の研究で懸念されていた抗体獲得への影響は評価されていません。
Dr. KIDの執筆した書籍・Note
絵本:めからはいりやすいウイルスのはなし
知っておきたいウイルスと体のこと:
目から入りやすいウイルス(アデノウイルス)が体に入ると何が起きるのでしょう。
ウイルスと、ウイルスとたたかう体の様子をやさしく解説。
感染症にかかるとどうなるのか、そしてどうやって治すことができるのか、
わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/12/21 11:30:52時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:はなからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、鼻かぜについて、わかりやすいストーリーと絵で展開します。
(2024/12/21 13:39:04時点 Amazon調べ-詳細)
絵本:くちからはいりやすいウイルスのはなし
こちらの絵本では、 胃腸炎について、自然経過、ホームケア、感染予防について解説した絵本です。
(2024/12/21 13:39:05時点 Amazon調べ-詳細)
医学書:小児のかぜ薬のエビデンス
小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:
(2024/12/21 02:10:50時点 Amazon調べ-詳細)
小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。
医学書:小児の抗菌薬のエビデンス
こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。
日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。
noteもやっています