- ワクチン接種後に赤く腫れ上がります
- あらかじめ解熱薬を使用すると改善しますか?
ワクチン接種後には、痛みが生じたり、熱が出ることがあるため、解熱薬の使用を希望される方もいると思います。
かくいう私も、インフルエンザワクチンを接種すると、結構赤く腫れあがる体質で、ひどい時は発熱します。
また、あらかじめこういった副反応が起こらないよう「予防的に解熱・鎮痛薬を」と考える方もいるようですが、実際のところ予防効果は本当にあるのでしょうか。
今回は、4〜6歳の小児において、解熱鎮痛薬がワクチン接種後の局所反応の予防に有効かを検討した研究をご紹介します。
- ワクチン接種後の局所反応に対して、解熱薬を予防的に投与することの是非を検討した論文
- 接種前後に使用しても、予防はできなかった
Pediatrics. 2006 Mar;117(3):620-5
アメリカと日本では、予防接種のスケジュールがやや異なります。
解熱鎮痛薬は、小児のワクチン接種後の局所反応(腫れ)を予防するか?
研究の背景/目的
ワクチン接種による局所反応の頻度は、ジフテリア/破傷風トキソイド/無細胞百日咳 (DTaP) ワクチンの連続投与により増加し, 局所反応は5回目のDTaPワクチン接種を受けた小児の大部分で起こる。
これらの反応がアセトアミノフェンやイブプロフェンの予防的使用で予防できるかどうかは不明である。
研究の方法
この3群ランダム化盲検比較試験では, 372人の小児をアセトアミノフェン,イブプロフェンまたはプラセボのいずれかを受けるために2:2:1比で無作為に割り当てた。
試験薬の初回投与は第5回DTaPワクチン接種前2時間以内に行い、残りの2回は6時間間隔で投与した。
主要評価項目には、接種後2日目の直径5 cm以上の発赤又は変色を伴う局所反応、接種後2日目の夕方又はその間に2 cm以上の患肢中心周囲の増加、接種後3日目に認められた発赤又は変色の領域として定義される持続的局所反応が含まれた。
研究の結果
5 cm以上の発赤または変色を伴う局所反応がプラセボ群の小児の35%で報告されたのに対し,アセトアミノフェン群の小児では33%,イブプロフェン群の小児では37%であった。
また,接種した部位の中央周囲に≧2 cmの増加または持続的な局所反応を示す子供の割合は、プラセボ群と治療群の間にほとんど差はなかった。
結論
アセトアミノフェンまたはイブプロフェンによる予防は、5回目のDTaPワクチン接種に対する局所反応の予防において、臨床的に利益を提供するという証拠は見つからなかった。
考察と感想
2003-2004年にアメリカのシアトルで行われた研究のようですね。
背景として、アメリカではDTaPワクチン(日本でいう3種混合)は、0歳代に3回、1歳代で1回、4〜6歳で1回接種しており、この5回目が今回の研究の対象になったようです。
このDTaPワクチンの接種後に局所反応(いわゆる腫れや発赤)が起こりやすいのが知られており、5回目の接種後の1/3が5cm以上の、1/10が10cm以上の、1/50が広範にわたる発赤が生じていたようです。
アセトアミノフェン、イブプロフェン、プラセボで比較したところ、ほとんど有効性が認められなかったようです:
A | I | P | |
> 5cm | 33% | 37% | 35% |
> 2.5 cm | 40% | 47% | 42% |
痛み | 44% | 52% | 53% |
> 38C | 1% | 2% | 3% |
痛みや発熱などの指標も見ていますが、3つのグループでほとんど差がないのが分かります。
まとめ
今回は、アメリカで行われた研究で、ワクチン接種前後の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェン)の使用が、局所反応などを軽減する効果があるか検討しています。
解熱鎮痛薬を使用しても、局所反応や発熱の予防にはならなかったようで、メリットはほとんどないようです。
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