- ヴェポラッブ(Vapor Rub)は子供の咳に効きますか?
と外来で質問されることがあります。
ヴェポラッブは昔から使用されている民間療法でもあります。
デキストロメトルファンなど咳止めの有効性が疑問視され、さらに気管支拡張薬や抗ヒスタミン薬の有用性も否定的でした。
そこで今回の研究が行われたようです。
(*アイキャッチ画像はAmazonより)
研究の目的
今回の研究は2008-2010年にかけてペンシルベニアで行われました。対象となった小児は、
- 2〜11歳
- 風邪の症状が7日以上
- 喘息、肺炎、副鼻腔炎などがない
- ヴェポラッブを含む市販薬を使用していない
を対象にしています。(表は論文より拝借)
まず、保護者から昨夜の咳の症状を7点のリッカート尺度(Likert scale)で行いました。
治療の割付は、2〜5歳と6〜11歳で層別化をして、
- ヴェポラッブ(Vicks VapoRub)
- ワセリン軟膏(Bentonville)
- 治療なし
のいずれかをランダムに行っています。
それぞれの使用量は、2〜5歳は5 ml、6〜11歳は10 ml使用されています。
研究の結果と考察
138人が解析の対象となりました。
こちらが対象患者の背景情報になりますが、3つのグループは似たような特徴でした。
咳の症状について
こちらの図が咳の重症度の変化を見ています。
VR(ヴェポラッブ)が咳の重症度を最も改善させており、無治療と比較すると統計学的な有意差はありましたが、プラセボ(ワセリン:Petrolatum)と比較すると有意差はありませんでした。
こちらは鼻の症状を見ています。鼻閉はヴェポラッブ群3つのグループで最も改善度が高そうでした。一方、鼻水の症状については同程度の結果となりました。
咳や痰がらみがあると子供、保護者とも睡眠が妨げられることがあります。
子供、保護者とも、ヴェポラッブグループの睡眠の質が最もよく改善しました。
ヴェポラッブの副作用について
こちらが副作用の報告になります。
ヴェポラッブグループで皮膚の発疹や灼熱感(焼けるような感じ)がありました。
考察
今回の研究では、ヴェポラッブを使用した場合、咳の症状はやや軽快し、本人と保護者とも睡眠の質が改善する傾向にありました。
しかし、私は少しこの結果に慎重になっています。
今回の研究は盲検化を行っています。つまり、ヴェポラッブをもらったのか、ワセリンをもらったのかはわからない状況にしています。
しかし、ヴェポラッブは特有の匂いがあり、また皮膚の灼熱感などから盲検化がしっかりできていなかった可能性はありうると思います。
アウトカムの評価が親の主観によるので、ヴェポラッブを使用したかわかってしまった場合、親の評価が変わってしまう可能性があります。
この点は少し差し引いて解釈する必要があるでしょう。
まとめ
今回の研究では、2−11歳の小児のかぜにおいてヴェポラッブは夜間の咳や睡眠を改善させてくれるかもしれません。
しかし、研究の評価の問題もあり、やや信頼性は低くなります。
他の研究結果を見つつ、総合的に判断したいところです。
2ー11歳へのヴェポラッブは…
- 夜間の咳と睡眠を改善するかもしれない
- しかし、研究の質に少し問題がある
Dr.KID