賢明な医療の選択

健康な子供にビタミンD濃度をルーチンで測定することは避ける[Choosing wisely]

今回は、低身長と検査に関してです。

この推奨を「choosing wisely」ではどのように記載されているのか紹介してみようと思います。

ユーキ先生
ユーキ先生
低身長と検査に関して、どうなっているのでしょうか?

Dr.KID
Dr.KID
Choosing wiselyを見てみましょう。

ポイント

  •  Choosing wisely:ビタミンDの検査に関して
  •  疑わしい病歴や所見のない小児に、ルーチンで検査しない

  American Academy of PediatricsからのChoosing Wisely

健康な子供にビタミンD濃度をルーチンで測定することは避ける[Choosing wisely]

Avoid ordering Vitamin D concentrations routinely in otherwise healthy children, including children who are overweight or obese.

Although a 25-hydroxyvitamin D concentration, reflecting both vitamin D synthesis and intake, is the correct screening lab to monitor for vitamin D deficiency, current evidence is not sufficient to suggest that screening in otherwise healthy including children who are overweight or obese is necessary or safe.

Global consensus recommendations caution against population-based screening for vitamin D deficiency (1). The US Preventive Services Task Force also has noted that variability of current assays and unclear cutoffs for deficiency may lead to “misclassification” of persons as having vitamin D deficiency, and that this misclassification “could outweigh any benefits if there are harms” (2). The American Academy of Pediatrics report on Optimizing Bone Health in Children and Adolescents advises screening for vitamin D deficiency only in patients with disorders associated with low bone mass such as rickets and/or a history of recurrent, low-trauma fractures (3).

It has been shown that children who are overweight or obese have a greater likelihood of having low vitamin D levels (4). If the history suggests an obese child has insufficient dietary intake of vitamin D (e.g., little milk intake), a vitamin D supplement should be recommended, which is more cost-effective than 25-hydroxyvitamin D measurements for both screening and monitoring therapy.

体重過多や肥満の子供を含め、健康な子供にビタミンD濃度をルーチンで測定することは避けるべきである。

ビタミンDの合成と摂取の両方を反映する25-ヒドロキシビタミンD濃度は、ビタミンD欠乏症を監視するための適切なスクリーニング検査であるが、現在のエビデンスでは、太りすぎや肥満の子どもを含む、それ以外の健康な子どもに対するスクリーニングの必要性や安全性を示唆するには十分ではない。

世界的なコンセンサス勧告では、集団ベースのビタミンD欠乏症のスクリーニングを行わないように警告されています。

また、米国のCDCタスクフォースは、現行の測定法のばらつきや欠乏症のカットオフ値が不明確であることから、ビタミンD欠乏症の「誤判定」につながる可能性があり、この誤判定は「有害性がある場合には有益性を上回る可能性がある」と指摘している。

American Academy of Pediatricsのレポート「Optimizing Bone Health in Children and Adolescents」では、くる病などの低骨量を伴う疾患や、低外傷性の骨折を繰り返している患者に対してのみ、ビタミンD欠乏症のスクリーニングを行うことを推奨しています。

体重過多や肥満の子供は、ビタミンD濃度が低くなる可能性が高いことがわかっています。

既往歴から肥満の子供がビタミンDの食事摂取量が不足していると考えられる場合(例:牛乳の摂取量が少ない)、ビタミンDサプリメントの摂取を推奨すべきであり、スクリーニングと治療のモニタリングの両方において、25-ヒドロキシビタミンDの測定値よりも費用対効果が高い。

考察と感想

ビタミンDの検査に関するchoosing wiselyですね。

日本でもビタミンD不足は問題視されることが時々あるようですが、検査をするというより、きちんと病歴を確認して、栄養摂取を指導するというのが重要なのでしょう。

参考文献も読んで勉強します:

Munns CF, Shaw N, Kiely M, Specker BL, Thacher TD, et al. Global Consensus Recommendation on Prevention and Management of Nutritional Rickets. J Clin Endocrinol Metab. 2016 Feb;101(2):394-415. Co-Published in Horm Res Paediatr. 2016;85(2):83-106.

LeBlanc E, Chou R, Zakher B, et al. Screening for Vitamin D Deficiency: Systematic Review for the U.S. Preventive Services Task Force Recommendation [Internet]. Rockville (MD): Agency for Healthcare Research and Quality (US); 2014 Nov. (Evidence Syntheses, No. 119.)

Optimizing Bone Health in Children and Adolescents Golden N, Abrams S, COMMITTEE ON NUTRITION Pediatrics Sep 2014, 2014-2173.

Turer CB, Lin H, Flores G. Prevalence of vitamin D deficiency among overweight and obese US children. Pediatrics December 2012;doi:10.1542/peds2012-1711

まとめ

今回は、ビタミンDの検査に関するchoosing wiselyをご紹介しました。

これ以外にも項目が出ているようなので、コツコツと読んでいこうと思います。

 

created by Rinker
¥6,600
(2024/12/21 03:10:47時点 Amazon調べ-詳細)

Dr. KIDの執筆した書籍・Note

医学書:小児のかぜ薬のエビデンス

小児のかぜ薬のエビデンスについて、システマティックレビューとメタ解析の結果を中心に解説しています。
また、これらの文献の読み方・考え方についても「Lecture」として解説しました。
1冊で2度美味しい本です:

小児の診療に関わる医療者に広く読んでいただければと思います。

医学書:小児の抗菌薬のエビデンス

こちらは、私が3年間かかわってきた小児の抗菌薬の適正使用を行なった研究から生まれた書籍です。

日本の小児において、現在の抗菌薬の使用状況の何が問題で、どのようなエビデンスを知れば、実際の診療に変化をもたらせるのかを、小児感染症のエキスパートの先生と一緒に議論しながら生まれた書籍です。

created by Rinker
¥3,850
(2024/12/21 02:10:51時点 Amazon調べ-詳細)

Dr.KID
Dr.KID
各章のはじめに4コマ漫画がありますよー!

noteもやっています

かぜ薬とホームケアのまとめnote

小児のかぜ薬とホームケアの科学的根拠

 

小児科外来でよくある質問に、科学的根拠を持って答えるnote

保護者からのよくある質問に科学的根拠で答える

 

当ブログの注意点について

当ブログは医療関係者・保護者の方々に、科学的根拠に基づいた医療情報をお届けするのをメインに行なっています。参考にする、勉強会の題材にするなど、個人的な利用や、閉ざされた環境で使用される分には構いません。

一方で、当ブログ記事を題材にして、運営者は寄稿を行なったり書籍の執筆をしています。このため運営者の許可なく、ブログ記事の盗用、剽窃、不適切な引用をしてメディア向けの資料(動画を含む)として使用したり、寄稿をしないようお願いします。

ブログの記載やアイデアを公的に利用されたい場合、お問い合わせ欄から運営者への連絡お願いします。ご協力よろしくお願いします。

ABOUT ME
Dr-KID
このブログ(https://www.dr-kid.net )を書いてる小児科専門医・疫学者。 小児医療の研究で、英語論文を年5〜10本執筆、査読は年30-50本。 趣味は中長期投資、旅・散策、サッカー観戦。note (https://note.mu/drkid)もやってます。