- ヨーグルトはお腹に良さそう
- ひょっとしたら下痢に効く?それとも悪化させる?
と気になっている方がいるかもしれません。
理屈としては、以下のような感じでしょうか
- プロバイオティクスは小児の下痢に有効かもしれない
- ヨーグルトはプロバイオティクスを含んでいる
- よってヨーグルトは小児の下痢に有効かも?
実はこの論理、一見正しそうで落とし穴があります。特に気をつけたほうがよいのは「プロバイオティクス」という名称で、これはある意味菌の総称です。
例えば、これまで行われてきた研究は、Lactobacillus rhamnosusや L. reuteri、Bifidobacteriumなどが中心でした。
しかし、ヨーグルトに含まれている菌株はLactobacillus bulgaricusやStreptococcus thermophilusなので、少し異なります。
同じプロバイオティクスでも、菌株が異なれば治療効果が変わってしまう可能性はあるので、有効性は必ずしも保証はされていないのです。
さらに、ヨーグルトとプロバイオティクスの製剤とでは含まれている菌株の量もことなります。このため、単純に結果を一般化してしまうのは、やや危険と考えています。
そこで、今回の疑問に答えた論文をご紹介します。
研究方法
今回の研究はイランで行われたランダム化比較試験で、
- 6〜24ヶ月の小児
- 下痢で入院が必要であった
- 粘血便なし
- 重篤な疾患なし
- 慢性疾患なし
を対象に行われています。治療は、経口補水療法に加えて
- ヨーグルト
- 治療なし
にランダムに割り振っています。
アウトカムの評価
治療のアウトカムは、
- 下痢の頻度
- 体重の変化
- 入院日数
などをみています。
研究結果と考察
最終的に80人の患者がksん急に参加し、40人がヨーグルトを追加、40人は追加治療なしで経過をみることになりました。患者背景は2グループで大きくはかわらず、
- 男児がやや多い
- 月齢は12ヶ月ほど
- 体重は9kgほど
となっています。治療前の下痢の頻度は、ヨーグルトグループのほうが(+1.2回)やや多かったです。(8.5 vs 7.3)
アウトカムについて
アウトカムを比較すると以下のようになります。
ヨーグルト N = 40 |
コントロール N = 40 |
|
入院日数 | 2.7日 (0.91) |
3.1日 (0.74) |
体重増加 | 435g (89.3) |
383.8 (99) |
下痢の減少 | -4.3回 (1.7) |
-3.6回 (1.2) |
この結果をみると、ヨーグルトを接種した乳幼児のほうが
- 入院日数がやや短い
- 体重増加がやや多い
- 下痢の頻度の減少が大きい
といえます。いずれも統計学的な有意差もあったようです。
考察と感想
ここからは私的な考察です。この研究結果は2点ほど注意しなければいけない点があります。主に、
- 盲検化が不十分
- 一般化について
それぞれを簡潔に説明していきましょう。
まず盲検化についてですが、治療の中身をすでに医師も保護者も知っています。なぜなら、プラセボ(偽薬)をおいていないですし、ヨーグルトを病棟で食べている姿は当然、目撃するでしょう。
このため、アウトカムの評価、例えば入院日数や下痢の回数には影響してしまうことがあります。
確かにランダム化を行えば、患者背景は整えることはできますが、このように治療の後に起こることまでは対処できません。
そして一般化についてです。
今回の結果をみて「じゃあ、日本の小児でも」と考えてしまいたくなります。
ですが、ヨーグルトに関してはそこまで単純化するのは少し危ういと思っています。
そもそも、日本で、このイランで行われたヨーグルトと同じものが手に入るかといえばおそらく「No」です。ヨーグルトにはプロバイオティクス以外にも、製造方法や組成は微妙にことなることが予測されます。
また、プロバイオティクスの有効性を考える時に、腸の中の正常な細菌叢についても考える必要があります。このため、この研究結果のみで、「日本でもいける」と考えてしまうのは、やや早とちりな気がしています。
まとめ
今回の研究は、イランの6ヶ月〜24ヶ月の小児を対象に、ヨーグルトが小児の下痢に有効かを検討しました。
結果として、ヨーグルトを使用すると、入院日数を0.4日を短縮させ、体重の回復が50g多く、下痢の回数が0.7回ほど少なくなりました。
日本でもこの結果が一般化できるかは、私は慎重な立場でいます。