これまでヨーグルトが小児の下痢に有効かをパキスタンで行われた論文をもとにいくつか紹介してきました。
いずれの研究も有効性はありそうでしたが、他国への一般化可能性はやや慎重になってしまいます。
1つは胃腸炎の原因となる病原体の違い、その他は小児の栄養状態やなど、様々な要因が影響してしまうことがあります。
今回ピックアップした論文は、ヨーグルトが小児の急性下痢に有効かを検討しています。
対象となったのは、栄養状態のよくない小児です。
研究の方法
こちらの研究はインドのデリーにある病院で研究が行われました。対象となったのは、
- 低栄養がある
- 4〜48ヶ月の男児のみ
- 96時間以内の下痢
- 血便なし
などを対象にしています。尿のコンタミを避けるために男児のみを対象にしたようです。
治療
ランダム化をして、インドでの通常の下痢患者用の食事 + 補液に
- ミルク(人工乳)
- ヨーグルト(L. bulgaricusとStrep. thermophilus)
をランダムの割付て投与しています。
アウトカム
アウトカムについては、
- 総カロリー
- 下痢の排出量
- 体重の変化率
などを見ています。
結果と考察
最終的にミルク(人工乳)を投与されたのは49人、ヨーグルトを投与されたのは47人でした。患者背景の特徴は以下の通りになります:
- 体重:平均 6kgほど
- 7-12ヶ月が50%
- 9割以上に脱水あり
アウトカムについて
こちらでアウトカムについて解説していきます:
ミルク (N = 49) |
ヨーグルト (N = 47) |
|
総カロリー | 284.6 | 265.4 |
下痢の量 (g/kg) | ||
1日目 | 60.5 | 45.9 |
2日目 | 30.8 | 29.2 |
3日目 | 20.4 | 19.1 |
合計 | 128.8 | 110.9 |
体重変化率 | ||
1日目 | 0% | -1.6% |
2日目 | +0.9% | -1.6% |
3日目 | +0.9% | -0.8% |
回復時 | +0.5% | -1.6% |
ミルク(人工乳)とヨーグルトのアウトカムを比較しています。
下痢の量に関しては、ヨーグルトを使用した方が少なめではありますが、ここに統計学的な有意差はありませんでした。
体重変化率を見ると、ミルクを使用したグループの方が体重は微増していますが、ヨーグルトグループでは微減しています。
栄養不良のお子さんが対象ですので、少し重目に受け止めた方がいい結果かもしれませんね。
考察と感想
前回、ご紹介したパキスタンでの研究では、ヨーグルトは有効性がありそうでしたが、今回の研究ではそうでもありませんでした。
「効くの?効かないの?どっち?」となってしまいそうですが、そもそもパキスタンで行われた研究と、今回の研究では同じ下痢でも対象疾患が異なる点に留意した方が良いです。
パキスタンで行われた研究は、2週間以上持続する下痢が対象で、主には二次性の乳糖不耐症が対象になっています。
一方で、今回のインドの研究は下痢が出てまもないお子さん、いわゆる急性胃腸炎の子供が対象なのです。
異なる疾患でのヨーグルトの有効性を見ているため、結果が異なるのもある意味当然なのです。
「下痢にヨーグルトが効く or 効かない」と極端に字数を減らして単純化してしまうと、誤解を招いてしまうので、この点は伝える側が注意する必要があるのでしょうね。
まとめ
今回の研究は、インドで、栄養失調のある小児の急性下痢に対して、ヨーグルトが有効であるかを検証しています。
結果としては、ヨーグルトを使用すると下痢の量はやや減るかもしれませんが、最終的に体重が減少してしまい、メリットが少ない印象でした。
栄養失調のないお子さんへの妥当性は今回の研究ではできていないので、別途、行われた研究を参照する必要がありそうです。
1−2年前までですが、ヨーグルトを作るのが好きで、よく自宅で作っていました。市販のものより全然美味しく、さらに安くできるので、ヨーグルトメーカーは非常に重宝していました。
最近好きなヨーグルトはギリシャヨーグルトです。この濃厚な感じがたまらなく好きなので、ほぼ毎朝食べています。