- 先進国において、ヨーグルトは小児の急性下痢に効くのだろうか?
これまで、ヨーグルト(やそれに使用される菌株)が小児の下痢に有効があるかは、インドやパキスタンなど先進国以外の国々で、しかも健常児ではなく低栄養の小児をメインに研究がされてきました。
途上国でヨーグルトの研究が盛んに行われたのも理由があり、プロバイオティクスを購入するより、ヨーグルトの方が安上がりであったり、その国の食文化に根付いていたりと、様々な理由があったのでしょう。
一方で、有効性のデータが出てくると、実際に先進国でも同じ結果が得られるのかはきになるところです。そこで、今回の研究が、フランスにて行われました。
ヨーグルトではなく、ヨーグルトで使用される菌株を人工乳に混ぜて投与した研究です。
研究の方法
今回の研究は、フランスで行われ、
- 3ヶ月〜24ヶ月
- 急性下痢症で入院した小児
などを対象にして、研究が行われました。
治療について
治療は、
- 人工乳
- L. bulgaricusやStrep. thermophilusの入った人工乳
をランダムに患者に割付けて、7日間投与しています。
L. bulgaricusやStrep. thermophilusは、ヨーグルトによく使われる菌株で、これをミルクに入れて2時間ほど発酵ささたようです。
アウトカムについて
研究のアウトカムは、
- 治療の成功率
- 下痢の期間
- 下痢の回数
- 嘔吐回数
- 体重の増加
などを指標にしています。
研究結果と考察
最終的に112人が研究に参加しました。内訳は、人工乳が56人、ヨーグルト(と同じ菌株を入れたミルク)が56人になりました。
患者背景を見ると、
- 月齢:8ヶ月
- 入院前の下痢の期間:約3日
- 下痢の回数:6回
- 嘔吐の回数:3回
- 体重:7.5 kg
でした。
アウトカムについて
研究結果を比較してみましょう。
ミルク N = 56 |
ヨーグルト N = 56 |
|
下痢の期間 | 61.7h | 44.1h |
下痢の回数 | 17 | 12 |
嘔吐の回数 | 2 | 2 |
体重増加 | 96g | 139g |
ヨーグルトと同じ菌株をミルクに入れたグループの方が、下痢の期間は1日弱ほど短く、下痢の回数が少なく、体重もわずかに微増している印象です。
下痢の期間と回数は統計学的な有意差があったようです。
考察と感想
今回の研究では、ヨーグルトと同じ菌株をミルクに入れて下痢のある乳幼児に使用したら、下痢の頻度と期間が短縮していました。
過去のプロバイオティクスの研究結果とほぼ類似していますが、異なる点としては菌株を発酵させた点でしょうか。
確かにミルクに入れて2時間ほど44℃で管理すれば発酵しますし、菌株も増えますので、菌株の増量したことによる効果、よりヨーグルトに似せた乳製品にしたかったということでしょうか。
タイトルには「effect of feeding yogurt」と書かれていますが、実際にはヨーグルトそのものを投与したわけでなく、ヨーグルトと同じ菌株をミルクに入れて発酵させたわけなので、ちょっと誤解を招く表現と思いました。
まとめ
今回の研究は、フランスにおいて、急性下痢で受診した小児を対象に、ヨーグルトに使用する菌株( L. bulgaricusやStrep. thermophilus)が有効かを確認しています。
結果として、下痢は1日ほど短縮させそうな印象でした。
ヨーグルトそのものを食べさせたわけではなかったようなので、タイトルの解釈には気をつけてください。
ヨーグルトも身近な商品であるので、こういった論文は面白いですね。
ヨーグルト飲料 vs. ヨーグルト vs. プロバイオティクスでがちんこ勝負をすると、どういう結果になるのかは、非常に気になるところです。