- ヨーグルトにはプロバイオティクスが入っているけれども、整腸剤として処方されるプロバイオティクスを混ぜるとどうなるのだろうか?
と考えたことがある方がいるかもしれません。
ひょっとしたら、プロバイオティクス同士が拮抗してしまい、効果が減弱してしまうことが予測されます。
あるいは、プロバイオティクス同士の相乗・相加効果によって、より有効性が強くなることも想定されます。
こちらの研究は2010年に出版されたサウジアラビアでの研究ですが、この質問に答えてくれています。
研究の方法
今回の研究は、2008-2009年にサウジアラビアで行われた、ランダム化比較試験(RCT)になります。対象となった患者は、
- 下痢で入院した患者
- 下痢発症後 48時間以内
- 血便はない
- 生後6ヶ月〜12歳
- 慢性疾患や重篤な状態ではない
が対象となっています。
治療について
治療は、
- 通常のヨーグルト
- プロバイオティクスを添加したヨーグルト
のいずれかをランダムに割り当て、5日間投与しています。プロバイオティクスは、
- L. bulgaricus
- L. acidophilus
- Bifid bacterium
- Strep. thermophilus
- が添加されています。
アウトカム
研究のアウトカムは、
- 入院日数
- 下痢の頻度
を比較しています。下痢の頻度に関しては、入院日数ごとに調査したようです。
研究の結果と考察
最終的に100人の患者が研究対象となりました。特徴として、
- 平均年齢:2歳
- やや男児が多い
- 下痢の回数:4-6回
となっています。
アウトカムについて
まずは入院日数を見てみましょう。
Y + P | Y | 差 | |
入院日数 | 1.26 | 1.28 | -0.02 |
*Y = ヨーグルト、P = プロバイオティクス
入院日数はプロバイオティクスを入れても入れなくても変わらなかったです。
下痢の回数を日別にみていきましょう。
Y + P | Y | 差 | |
入院前 | 4.4 | 5.7 | -1.3 |
1日目 | 4.0 | 6.5 | -2.5 |
2日目 | 3.6 | 4.8 | -1.2 |
3日目 | 2.6 | 3.7 | -1.0 |
4日目 | 1.8 | 2.9 | -1.2 |
この表を見ると、ヨーグルトにプロバイオティクスを入れた方が下痢の回数は軽快しているように見えます。
ですが、実は入院前の回数を見ると、4.4回 vs 5.7回と最初から開きがあります。
初日は2.5回の差と広がりはありますが、その後は1回ほどの差で推移しています。
最初の排便回数を補正した方が良かったのかもしれませんね。
例えば、下痢の減少数を表にすると以下のようになります:
Y + P | Y | |
1日目 | 0.4 | -0.8 |
2日目 | 0.8 | 0.9 |
3日目 | 1.8 | 2.0 |
4日目 | 2.6 | 2.8 |
このように、初日の排便回数で補正をすると、ほとんど差がないのがわかります。
考察と感想
ランダム化比較試験では、患者背景のバランスを保つために、ランダム化をします。
今回の例でいうと、プロバイオティクスを使用するグループも、そうでないグループも、治療を開始する前には同じくらいの排便回数が望ましいです。
しかし、今回は「4.4回 vs. 5.7回」と開きがあります。
今回のような場合は、そのまま2つのグループを比較するより、このベースラインでの差を補正した方が良いと思います。
例えば、私が表にしたように差をとって報告する、あるいは比をとって減少率(%)として報告するなど選択肢があります。もちろん、両方行っても悪くはないと思います。
まとめ
今回の研究は、サウジアラビアで行われたランダム化比較試験で、プロバイオティクスをヨーグルトに混ぜると、より効果が増強するか否かを検討しています。
著者らは有効性を主張していますが、統計学的な手法にやや難があり、その点を補正してみると有効性ははっきりとは認められませんでした。
追加検証は今後も必要と思います。
先日のタイムセールでこちらのタブレットを新規に購入しました。
iPadより機能は色々と劣りますが、本を読んだりするだけならこちらでも十分な気がします。
欲をいえば、論分をまとめているMendeleyというソフトに同期できるようアプリを導入していただけれなと思っております。